雄一の本棚
殺人鬼フジコの衝動

殺人鬼フジコの衝動

真梨幸子 徳間書店 2011年5月1日

感想

本屋で見かけた新聞広告に目が止まり、思わず手に取ってしまった一冊だ。一家惨殺事件の生き残りが殺人鬼へと変貌していく過程を描くという設定は、正直なところ躊躇がなかったわけではない。しかし、いざ読み進めてみると、その懸念は杞憂に終わった。 著者が巧妙に仕掛けた謎の構造が素晴らしい。断片的に語られる過去と現在が少しずつ接合されていく緊張感、そして最後に明かされる真実の瞬間まで、手を止められなかった。単なるサスペンス小説ではなく、人間の心がどのようにして破綻していくのか、その心理的プロセスを精密に描こうとする著者の意志が感じられる。 終盤に差し掛かる頃には、予想もしなかった結末へと導かれていた。その哀しさ、そして綿密な構成に対する感動は、読了後も長く心に残っている。年を重ねてから手にしたからこそ、この物語の深さがより一層身に沁みる思いがしたのだろう。慎重に作品を選ぶ習慣のある身としても、これは間違いなく読む価値のある傑作だと確信している。

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