殺人鬼フジコの衝動

殺人鬼フジコの衝動

真梨幸子

出版社:徳間書店 出版年月日:2011/05/01

徳間書店 | 2011/05/01

4.50
本棚登録:3人

みんなの感想

感想

話題の作品だったので手に取ってみたのだが、想像以上に深い傑作だった。一家惨殺事件の唯一の生き残りが、やがて伝説の殺人鬼へと変貌していく過程を追うというこのストーリーは、単なるサスペンスではない。 著者の筆致は実に精密で、登場人物の心理描写や事件のディテールが緻密に織り込まれている。読み進めるにつれ、何が少女を狂わせたのか、その根底にある哀しみが次第に明かされていく。構成も見事で、最後の一行に至ってようやく全てが繋がる瞬間の戦慄は、この年になって久しぶりに味わった感覚だ。 表面的には犯罪者の話だが、本質は人間がどのような条件下で壊れるのか、その普遍的な問いを問い続ける作品である。現代社会で生きる私たちが目を背けたくなる問題を、これほど気品高く、そして優しく描いた表現に感動した。確かに重い内容だが、それだけの価値がある一冊だと確信する。

感想

本屋で見かけた新聞広告に目が止まり、思わず手に取ってしまった一冊だ。一家惨殺事件の生き残りが殺人鬼へと変貌していく過程を描くという設定は、正直なところ躊躇がなかったわけではない。しかし、いざ読み進めてみると、その懸念は杞憂に終わった。 著者が巧妙に仕掛けた謎の構造が素晴らしい。断片的に語られる過去と現在が少しずつ接合されていく緊張感、そして最後に明かされる真実の瞬間まで、手を止められなかった。単なるサスペンス小説ではなく、人間の心がどのようにして破綻していくのか、その心理的プロセスを精密に描こうとする著者の意志が感じられる。 終盤に差し掛かる頃には、予想もしなかった結末へと導かれていた。その哀しさ、そして綿密な構成に対する感動は、読了後も長く心に残っている。年を重ねてから手にしたからこそ、この物語の深さがより一層身に沁みる思いがしたのだろう。慎重に作品を選ぶ習慣のある身としても、これは間違いなく読む価値のある傑作だと確信している。

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