雄一の本棚
感想

さとうみつろうの『神さまとのおしゃべり』『悪魔とのおしゃべり』が人気を集めている中、ついにAIとの対話篇が文庫化されたということで、興味を持って手に取りました。 実のところ、このシリーズについては事前のレビューを念入りに確認した上で読み始めたのですが、予想以上に考えさせられる内容でした。スマートスピーカーという身近な存在を媒介にして、「幸せとは何か」「心の仕組みとは何か」といった根源的な問いが立ち現れる。その問い掛けの手法が巧妙です。 AIという非人間的な存在からの視点を通じることで、むしろ人間らしさや心の本質が浮かび上がってくる。エンタメ小説として読みやすく設計されながらも、人生経験を重ねた読者には深い思索の余地が残されている。54年生きてきて、改めて考え直させられることが何度もありました。 ただし、哲学的な内容を提示しているだけで、その解釈を読者に完全に委ねている部分も多い。そこが良さでもあり、人によっては物足りなさを感じるかもしれません。上巻を読み終えた今、下巻も読む価値は十分あると判断します。

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