雄一の本棚
かばん屋の相続

かばん屋の相続

池井戸 潤 文藝春秋 2011年4月1日

感想

新聞の書評欄で高い評価を見かけたので、手に取った一冊です。金融機関に勤める身として、銀行員が主人公というだけで親近感を覚えましたが、それ以上に、この作品が描く人間関係の複雑さに引き込まれました。 かばん屋という一見地味な商売を舞台に、父の死後に浮き彫りになる家族の絆と葛藤。相続放棄という遺志の背景にある親心、そして兄弟の対立。どの登場人物にも正当な言い分があり、単純に誰が正しいとは言えない。そこが実に人間らしく、真摯です。 特に感心したのは、小倉太郎という金融マンの視点を通じて、経済的現実と人情のぶつかり合いが丁寧に描かれている点。収録されている他の短編も含め、一つひとつが深い余韻を残します。急いで読むのではなく、各編ごとに立ち止まって考えさせられる。慎重に本を選ぶ方なら、一度手にしてみることをお勧めします。間違いなく良い時間を過ごせるはずです。

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