雄一の本棚
海辺のカフカ(下巻)

海辺のカフカ(下巻)

村上 春樹 新潮社 2005年3月1日

感想

下巻に到って、この作品の全容が徐々に明かされていく過程が実に見事だった。上巻で感じた違和感や散らばった断片的な情景が、次第に有機的に結びついていく快感を味わえる。村上春樹の作風は確かに難解な面もあるが、この本に関しては、その複雑さ自体が物語の本質と深く関わっていることが理解できる。 カフカ少年とナカタさんという二つの視点から世界が描かれることで、現実と非現実の境界が曖昧になり、読者自身も「入り口の石」の先にある世界へ引き込まれていく。特に終盤に向かうにつれ、その引力は強まる一方だ。 手応えのある長篇を完読したい会社員にとって、この作品は確かに骨太な読み物である。一気読みではなく、各章で立ち止まり、描写の奥深さを反芻しながら読み進めることで、初めてその真価が見えてくるように感じた。海外での高評価も納得できる、実力のある傑作だと断定してもよいだろう。

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