雄一の本棚
フェルマーの最終定理

フェルマーの最終定理

サイモン・シン 新潮社 2006年6月1日

感想

数学という一見無味乾燥な世界に、こんなにも人間ドラマが存在するのかと驚いた。フェルマーが三世紀前に残した短い一文から始まるこの物語は、単なる数学の謎解きではなく、執念と希望に駆られた人間たちの闘いの記録だ。 著者の構成の巧みさに感心する。複雑な数学理論を無理に平易に説明するのではなく、歴史的な流れとワイルズという一人の数学者の人生を軸に据えることで、専門知識がない読者でも引き込まれていく。彼の幼少期の憧れから、挫折、そして最終的な証明に至るまでの過程が、驚くほど感動的に描かれている。 慎重な性格なので購入前は何度も立ち読みして悩んだが、その判断は正解だった。人文・思想書が好きな私にとって、このノンフィクションは知的興奮と人生への深い問いかけを同時に与えてくれる。科学技術の進展を辿る過程でもあり、本気で何かに取り組むことの尊さを改めて認識させられた。仕事の傍ら、じっくり読み進める価値のある一冊である。

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