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透明な夜の香り

透明な夜の香り

千早 茜 集英社 2020年4月3日

感想

香りという感覚を通じて人間の深層を描いた作品として、これは秀逸だ。 フリーランスになって十数年、人間関係の複雑さや孤独というテーマには敏感になっている。その目で読むと、調香師・朔という人物の造形がいかに繊細かが伝わってくる。天才ゆえの孤立、他者との距離感、そして香りを媒介とした微かな繋がり——こうした要素が見事に織り込まれている。 著者・千早茜の筆致は丁寧で、香りの描写が単なる官能的な表現に留まらず、登場人物たちの心情や秘密とリンクする仕掛けが素晴らしい。読み進むごとに「なるほど、こういうことか」と納得させられることが何度もあった。 ただし、物語の構造がやや複雑で、複数の依頼人の話が並行して進むため、最初は戸惑うかもしれない。但しそれは弱点ではなく、むしろ意図された効果のようにも感じられる。慎重に読み込む価値のある、層の深い長編小説だ。

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