葉桜の季節に君を想うということ

葉桜の季節に君を想うということ

歌野 晶午

出版社:文藝春秋 出版年月日:2007/05/01

文藝春秋 | 2007/05/01

4.50
本棚登録:6人

みんなの感想

仕事の締切に追われているはずなのに、この本は徹夜してでも続きが気になってしまう。そんな経験は久しぶりだ。 元私立探偵・成瀬将虎というキャラクターの軽妙さと、描かれるミステリーの奥深さのバランスが見事。霊感商法という社会的な問題から始まるストーリーが、予想外の方向へ展開していく快感がある。複雑に見えながらも、伏線が計算し尽くされているのが、エンジニア的な思考回路として心地よい。 特に感心したのは、このジャンルでありながら二度、三度読みたくなるという構成。初読では気づかない細部が浮かび上がってくる設計になっているのだろう。実際、読み終わった後に「あの場面の意味はこうだったのか」と気づく瞬間が何度もあった。 ただし、冒頭の展開が若干つかみが甘いと感じる部分もある。ここが理由で評価を四つ星に留めた。だが、中盤以降の伏線の張り方と回収のテンポは本当に素晴らしい。時間に余裕がある時に、もう一度丁寧に読み直したい一冊だ。

慎重派の私が、このミステリーに惹き込まれました。 各種ミステリー賞を受賞した理由がよく分かります。冒頭から次々と投げかけられる謎—霊感商法、謎の女性、そして主人公・成瀬将虎の背景—が見事に織り交ぜられており、一気読みせずにはいられませんでした。 特に秀逸なのは、物語が進むにつれて初期の印象が覆される構成です。最初は単なる探偵ミステリーだと思っていたのに、読み進めると登場人物の行動や心理に対する解釈が変わっていく。その巧妙さに何度も「あ、そういうことか」と納得させられます。 確認的な性質の私としては、最後まで読み終えてから読み返したくなる本というのは珍しく、その点でも高く評価できます。些細な伏線が後で効いてくるので、二度目の読書で新しい発見が必ずあります。 会社で疲れた日の週末、この本に没頭するのは本当に良い息抜きになりました。エッセイ的な要素も感じられ、娯楽としての面白さと思考的な深さが両立しているのは珍しいです。ミステリーが好きな方には確実にお勧めできる一冊です。

最初は「ミステリー小説か」と軽く見ていたのですが、途中から何度も立ち止まってしまいました。エンジニアとして論理的な思考に慣れているせいか、巧妙に仕掛けられた伏線に引っかかる自分に気づきながら読み進むのが面白い。著者の構成力には本当に感心します。 成瀬将虎というキャラクターが魅力的で、その人物描写から物語全体の奥行きが感じられるのも良かった。一見ドライな調査劇かと思いきや、人間の温かみが通底していて、冷徹さと優しさのバランスが絶妙です。 ただ正直なところ、初読では細部を見落とした部分があるんじゃないかという不安感が残っています。そういう時は再度読み直すべき本だと思っているので、今後改めて通読するつもり。複雑な人間関係とプロット構成をもう一度丁寧に追ってみたいです。 ビジネス書ばかり読む日常から、たまにはこういう仕掛けの豊かな作品に出会うのは良い刺激になりました。慎重派の私でも「これは間違いない」と判断できる傑作だと思います。

慎重に選書する私ですが、このミステリー小説は本当に正解でした。各賞を総なめにした理由が納得できます。 元探偵・成瀬将虎というキャラクターの魅力がまず素晴らしい。「何でもやってやろう屋」という自称に、彼の人間味のある柔軟性が現れています。霊感商法という現代的なテーマから始まる物語が、予想外の方向へ展開していく緊張感に引き込まれました。 特に感心したのは、複数の登場人物と事件が緻密に絡み合い、ラスト近くで全てが繋がる快感です。会社員生活で疲れた脳を活性化してくれるような、知的興奮が味わえます。何度も読み返したくなるというのは誇大広告ではなく、本当にその通り。登場人物たちの行動の意味が、読み直すたびに新しい光を放ちます。 39歳になると、ミステリーの細部への注目力が違うのか、若い頃より深く楽しめている気がします。長編ですが一気読みさせる力がある傑作です。迷っている方には、自信を持ってお勧めします。