仕事の締切に追われているはずなのに、この本は徹夜してでも続きが気になってしまう。そんな経験は久しぶりだ。 元私立探偵・成瀬将虎というキャラクターの軽妙さと、描かれるミステリーの奥深さのバランスが見事。霊感商法という社会的な問題から始まるストーリーが、予想外の方向へ展開していく快感がある。複雑に見えながらも、伏線が計算し尽くされているのが、エンジニア的な思考回路として心地よい。 特に感心したのは、このジャンルでありながら二度、三度読みたくなるという構成。初読では気づかない細部が浮かび上がってくる設計になっているのだろう。実際、読み終わった後に「あの場面の意味はこうだったのか」と気づく瞬間が何度もあった。 ただし、冒頭の展開が若干つかみが甘いと感じる部分もある。ここが理由で評価を四つ星に留めた。だが、中盤以降の伏線の張り方と回収のテンポは本当に素晴らしい。時間に余裕がある時に、もう一度丁寧に読み直したい一冊だ。