BUTTER
新潮社 | 2020/01/29
みんなの感想
話題になっているこの作品、やはり一気読みさせられました。梶井真奈子というキャラクターの魅力と危険性に引き込まれて、徹夜してしまったほど。 自営業で人間関係に敏感な身としては、この物語が描く女性たちの心理の揺らぎが非常にリアルに感じられます。普通だと思っていた人生が、ある存在との出会いでどう変わるのか。その過程が巧みに、時には不気味に描かれている。 著者の社会へのまなざしも鋭く、女性のあり方、欲望、権力について考えさせられることばかり。決して読みやすい内容ではありませんが、だからこそ読む価値がある。週刊誌記者である主人公の視点も、ジャーナリスティックで引き込まれます。 ただ、登場人物たちの行動が時々唐突に感じられる場面もあって、そこは完全には納得できませんでした。でも、その曖昧性も、この小説の不気味さを高めているのかもしれません。 同年代の女性たちに特に勧めたい一冊です。自分たちの人生や選択について改めて考えるきっかけをくれます。
話題になっていた『BUTTER』をようやく読み終わった。率直に言って、この作品は秀逸だ。 梶井真奈子という容疑者の人物像を通じて、現代社会における女性の欲望と抑圧、権力構造の問題を鮮烈に描いている。一見すると犯罪ミステリーのような形式だが、実のところは深い社会派の長編小説である。 週刊誌記者・町田里佳の視点から物語が進んでいくのだが、梶井との接触によって里佳自身がどう変貌していくのか、その心理描写が実に緻密だ。私たちが無意識に受け入れてきた社会規範や美しさの定義といったものが、根底から揺さぶられる感覚を覚えた。 58年間生きてきて、特に職場では「常識」や「秩序」の枠の中で動くことの大切さを学んできた身からすると、この作品の問題提起は正直、心をかき乱される。だからこそ良いのだ。登場人物たちの欲望に忠実に生きようとする姿勢、それに引きずられていく周囲の変化を見つめることで、自分自身の人生観すら問い直させられた。 文章の質も高く、読みごたえがある。現在進行形の重要な作品として、広く読まれるべき一冊だと思う。
社会派長編として期待して手に取った一冊でしたが、正直なところ満足できませんでした。 梶井真奈子というキャラクターの描き方に、どうしても違和感が残ります。確かに彼女の行動原理や思想は興味深いのですが、物語が進むにつれてその動機づけが曖昧に感じられました。フェミニズムとマーガリン嫌悪という設定自体は斬新ですし、社会的なテーマを掘り下げようという意図は伝わるのですが、それが十分に説得力を持つまで深掘りされていないような印象を受けました。 また、登場人物たちの変化のプロセスが急ぎすぎているのではないでしょうか。特に主人公・町田里佳の内面の変容が、読んでいて腑に落ちきりません。フリーランスとして様々な人間関係を観察してきた立場から言うと、人間の心理描写としては少し単純化されすぎていると感じます。 各紙誌の絶賛という評判に惹かれて読み始めたからこそ、余計に期待値とのギャップが大きかったのかもしれません。悪い本ではありませんが、この評価での推薦には慎重になります。
新聞の広告欄で何度も目にしたので、思い切って手に取ってみました。正直なところ、題材の扱い方に少し不安もありましたが、読んでみて良かった。 梶井真奈子という女性受刑者を通じて、現代社会の歪みと人間の欲望について、実に丁寧に問い掛けてくる作品です。外見や年齢で人を判断する世の中の空気、そうした抑圧から解放されたときに人はどう変わるのか——その過程が週刊誌記者・町田里佳の視点から徐々に描かれていく。 何より驚いたのは、この小説が単なる犯罪劇ではなく、女性の内面の変化、周囲の人間関係の複雑な絡み合いまで深く掘り下げている点です。読み進むにつれて、登場人物たちの行動が必ずしも悪いとも正しいとも言えない曖昧さに引き込まれていきました。 文庫本で読みやすく、各章が短めなので無理なく続けられたのも良かった。最初は慎重に構える必要もありますが、現代を生きる大人が読むに値する、きちんとした社会派小説だと思います。
話題になっていたこの作品、レビューを参考にして読んでみました。結論から言うと、期待以上に引き込まれた一冊です。 梶井真奈子というキャラクターの設定が巧妙で、一見すると理解しがたい彼女の行動原理を追うことで、私たち自身の欲望や社会的な「らしさ」への違和感が次々と浮き彫りになっていきます。フェミニズムやジェンダーといった重いテーマを扱いながらも、重苦しさを感じさせないのは著者の力量なのでしょう。 特に印象的だったのは、主人公・町田里佳の変貌の過程です。梶井との関わりを通じて、社会に求められる「女性らしさ」から解放されていく彼女の内的な葛藤と開放感が、丁寧に描かれています。慎重な性質の私も、つい一気読みしてしまいました。 ただし、この本は登場人物たちの欲望の赴くままの行動が肯定されているわけではなく、その結果としての破綻や代償も容赦なく描かれています。だからこそ、読み終わった後も考え続けてしまう重みがある。大人の女性読者にこそ、ぜひ手に取ってもらいたい作品です。
最近SNSで話題になっていたから手に取ったんですが、これは本当に面白かった。梶井真奈子という女性の存在感がすごい。表面的には単なるサスペンスかと思いきや、そこまで単純ではない。むしろ、この物語の中心にあるのは「欲望」と「女性らしさ」についての根本的な問いなんだと読み終わってから気づきました。 週刊誌記者の町田里佳の視点から物語が進んでいくんですが、梶井との関わりを深めるにつれて、里佳自身が変わっていく過程が秀逸です。その変化が違和感なく、かつ説得力を持って描かれているから引き込まれます。 フェミニズムとかマーガリンへの嫌悪とか、一見すると関連性のない要素が実は巧妙に物語に組み込まれていて、最後には全部が繋がる。こういう構成の巧さは久しぶりに感じました。主婦業をしていると、社会や女性の在り方について考える機会が多いんですが、この本はそうした問題を小説という形で深く問いかけてくる。いい意味で、読んだ後も考え続ける作品です。
漫画やライトノベルばかり読んでる自分が、なぜこんな作品に惹かれたのか自分でも驚いています。最初は「週刊誌記者」とか「容疑者との対話」という設定に不安もあったんですけど、ネットのレビューで高評価だったので思い切って手に取ってみました。 正直、予想を大きく裏切られました。表面的には犯罪サスペンスなんですが、実は人間の欲望とか自分らしさって何なのか、っていうもっと深いテーマが隠れている。主人公の梶井という女性が放つ言葉一つ一つが、周りの登場人物だけじゃなく、読んでる自分の心にも影響を与えてくる感じで。 文章が難しいところもあって、何度か読み返した箇所もあります。けど、だからこそ深く考えさせられるんだと思う。自分はまだ大学生で、人生経験も少ないけど、この本を読んで「社会」とか「個人の欲望」について初めてちゃんと考える機会になりました。 同年代の友人にも勧めたいけど、万人向けではないと思うので、心に余裕がある時に読むことをお勧めします。
この作品を手にしたのは、書評で「社会派長編」と評されていたからです。どんな内容だろうか、慎重に読み進めました。 梶井真奈子という女性の存在が、周囲の人間をどう変えていくのか。その力学を緻密に描いた傑作だと感じます。容疑者という立場にありながら、記者の里佳に影響を与え、やがて周囲の人生までも揺さぶる。その過程が見事です。 何より感心したのは、外見や年齢といった表面的な条件では人を判断できない、という古い私たちへの問い掛けです。年を重ねて、世間的な「当たり前」に縛られてきた自分たちは、こういう視点をどこかで忘れていたのかもしれません。 文庫版で手軽に読めるのも良かった。ただし、内容はけっして軽くありません。フェミニズムや欲望といったテーマが織り込まれており、単なるサスペンスではなく、深く考えさせられる作品です。 人間関係の複雑さ、社会的な圧力に抗う姿勢など、これからの人生でも大切だと思わせてくれました。七十代の私にとっても、新しい視点をもたらしてくれた一冊です。
社会派長編と銘打たれているだけあって、一筋縄ではいかない深さがあります。最初は事件の真相を追う記者視点で読み始めたのですが、次第に物語に引き込まれていきました。 何より興味深いのは、梶井真奈子というキャラクターの造形です。一般的な美女像に収まらない彼女が、どのように周囲に影響を与え、自らも変容していくのか。その過程が丁寧に描かれています。フェミニズムやバターなど一見すると相反する題材が、実は深い意図のもとに配置されていることに気づくと、作品全体の構想の大きさに感心します。 管理職という立場から申し上げると、組織内の人間関係の力学、特に女性同士の複雑な関係性がリアルに描かれているのが印象的でした。自分自身の経験と重ねながら読む部分も多くありました。 やや長編で、登場人物も多いため、最初は一気読みより腰を据えて向き合う必要があります。慎重に選書する私も、このレビューを読んで購入を迷いましたが、読了して正解でした。女性ならではの視点で楽しめる、考えさせられる一冊です。