莉子の本棚
BUTTER

BUTTER

柚木 麻子 新潮社 2020年1月29日

この作品を手にしたのは、書評で「社会派長編」と評されていたからです。どんな内容だろうか、慎重に読み進めました。 梶井真奈子という女性の存在が、周囲の人間をどう変えていくのか。その力学を緻密に描いた傑作だと感じます。容疑者という立場にありながら、記者の里佳に影響を与え、やがて周囲の人生までも揺さぶる。その過程が見事です。 何より感心したのは、外見や年齢といった表面的な条件では人を判断できない、という古い私たちへの問い掛けです。年を重ねて、世間的な「当たり前」に縛られてきた自分たちは、こういう視点をどこかで忘れていたのかもしれません。 文庫版で手軽に読めるのも良かった。ただし、内容はけっして軽くありません。フェミニズムや欲望といったテーマが織り込まれており、単なるサスペンスではなく、深く考えさせられる作品です。 人間関係の複雑さ、社会的な圧力に抗う姿勢など、これからの人生でも大切だと思わせてくれました。七十代の私にとっても、新しい視点をもたらしてくれた一冊です。