yomuzoの本棚
感想

『高校事変』の前日譚とのことで、本編未読ながら思い切って手に取ってみた。結果として、これは大正解だった。 15歳の優莉結衣という人物が、父親の死刑という重い背景を抱えながらも進学を目指す。その過程で全国の高校から次々と入学を拒否されるという設定から、この作品が単なる青春小説ではないことが伝わってくる。北茨城の鵺沼高校に辿り着いた彼女を待つ「陰謀」への導入部として、実にしっかり構成されている。 ビジネス書を多く読む立場からすると、こうした前日譚ものは前置きが冗長になりがちな懸念があったが、その心配は無用だった。著者は限られた紙幅の中で、結衣という人物の鋭さと脆さを同時に描き出し、読者を次へ次へと引き込んでいく。社会的な圧力や不公正に直面する少女の心理描写が緻密で、48を迎えた自分にも十分説得力がある。 本編を読まずにこの一冊で完結することはできないが、むしろそれが目論見なのだろう。良い意味で続きが気になる仕上がりだ。