裕子の本棚
感想

村上春樹の新訳ということで、どのようにアレンジされているのか興味深く手に取ってみました。カポーティのデビュー作だと聞いていましたが、こんなに繊細で幻想的な世界観を持つ物語だったとは。 南部の古い屋敷を舞台にした不思議な時間の中で、少年ジョエルが経験する出来事の数々。一見するとミステリアスなのですが、読み進めていくうちに、それは失われた幼年時代への郷愁を描いた作品なのだと気付きます。登場人物たちのぎこちない関係性や、何かが欠けているような空気感が実に巧みに表現されています。 正直なところ、最初は設定だけで判断するのは難しい作品だと思っていました。しかし、村上春樹の訳語選びの丁寧さもあって、カポーティが紡ぎ出した独特の世界に引き込まれてしまいました。何度か読み返したいと思わせる深い魅力がこの本にはあります。慎重派の私でも迷わずお勧めできる、素晴らしい一冊です。

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