裕子の本棚
峠を越えて

峠を越えて

最上裕 本の泉社 2025年9月1日

感想

図書館で見かけて、なんとなく手に取った本でした。帯の文句が胸に響いたんです。正義と現実のはざまで揺れる人生──それって、私たちの誰もが何らかの形で経験していることではないかしら。 この小説は、大企業という大きな組織の中で、信念を貫こうとした一人の労働者の歩みを描いています。読んでいて思ったのは、著者の言葉選びの優しさです。重いテーマなのに、決して説教的にならず、ちょうど人生の峠を越えてきた私の心に静かに響き渡ってきました。 青春時代の迷い、上京してからの葛藤、仲間との絆──各章が無理なく流れていて、気持ちよく読み進められます。特に人間関係の描き方がいいですね。きれいごとではなく、複雑で、だからこそ真実味がある。 78年生きてきた私が読んでも「ああ、わかるわ」と共感できる部分がいくつもありました。人生ってこんなもの、という達観ともちょっと違う、温かみのある世界観が好きです。気軽に読めるけれど、心に残る。そういう本、いいですね。