峠を越えて

峠を越えて

最上裕

出版社:本の泉社 出版年月日:2025/09/01

本の泉社 | 2025/09/01

4.25
本棚登録:5人

みんなの感想

感想

図書館で見かけて、なんとなく手に取った本でした。帯の文句が胸に響いたんです。正義と現実のはざまで揺れる人生──それって、私たちの誰もが何らかの形で経験していることではないかしら。 この小説は、大企業という大きな組織の中で、信念を貫こうとした一人の労働者の歩みを描いています。読んでいて思ったのは、著者の言葉選びの優しさです。重いテーマなのに、決して説教的にならず、ちょうど人生の峠を越えてきた私の心に静かに響き渡ってきました。 青春時代の迷い、上京してからの葛藤、仲間との絆──各章が無理なく流れていて、気持ちよく読み進められます。特に人間関係の描き方がいいですね。きれいごとではなく、複雑で、だからこそ真実味がある。 78年生きてきた私が読んでも「ああ、わかるわ」と共感できる部分がいくつもありました。人生ってこんなもの、という達観ともちょっと違う、温かみのある世界観が好きです。気軽に読めるけれど、心に残る。そういう本、いいですね。

感想

最近話題のこの作品、ようやく読み終わりました。IT企業での思想差別という重いテーマながら、決して暗くない。むしろ、正義と現実の間でもがき続けた著者の人生が、静かな力強さで伝わってきます。 窓際人生という代償を払いながらも、仲間との友情を貫く姿勢に心を打たれました。私たちの年代って、仕事と家庭のバランスや人間関係で妥協することも多いじゃないですか。だからこそ、自分の信念を曲げない勇気に共感できるんです。 構成も素晴らしくて、青春時代から現在までを章立てすることで、人生という「峠越え」が立体的に見えてくる。ミカン狩りから始まる思い出の積み重ねが、後の選択にどう影響したのかが自然と理解できます。 本当の自分らしさって何だろう、と改めて考えさせてくれる一冊。世間話で「最近いい本読んだよ」と薦めたくなる、でも深い思考を促す、そんな良質なエッセイ小説です。多くの人に読んでほしい作品ですね。

感想

大企業でのサラリーマン人生を送る身として、このタイトルには思わず手に取ってしまった。IT労働者が思想差別と闘いながら、いかに「峠を越えてきたのか」という人生ドラマ。同じ企業戦士の一人として興味深かったのは正直なところだ。 ただ読み終わってみると、期待値と現実のギャップに戸惑ってしまった。自伝的小説という触れ込みから、もっと具体的で説得力のあるサラリーマン人生の葛藤が描かれていると予想していたが、章立てを見ても象徴的な表現が多く、若干抽象的に感じられた部分もある。正義と利己心のはざまでもがく主人公の心理描写には共感できるシーンもあるが、全体を通しては、やや散漫な印象が残ってしまった。 話題の一冊として読んでみる価値はあると思う。特に企業内での不当な扱いを経験した方なら、より深い共感が得られるかもしれない。ただ、最後の一押しで心をつかむような迫力に欠けるのは残念だ。40代だからこそ感じる複雑な感情で、五分五分といったところだろうか。

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