短くて恐ろしいフィルの時代

短くて恐ろしいフィルの時代

ジョージ・ソーンダーズ, 岸本 佐知子

出版社:河出書房新社 出版年月日:2021/08/06

河出書房新社 | 2021/08/06

3.00
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みんなの感想

河出書房新社の文庫版を手に取ったのは、装丁のシンプルさと「アメリカ文学の鬼才」という帯の謳い文句に惹かれたからです。政治風刺とファンタジーを融合させた作品だと聞いていたので、期待を持って読み始めました。 設定のユニークさは確かです。内ホーナー国と外ホーナー国という架空の国家構造、そしてフィルという独裁者の台頭を描く話の枠組みは、現代政治への痛烈な批評として機能しています。脳がラックからはずれるたびに民衆を魅了するという表現も、独裁者の支配メカニズムを象徴的に示していて、読み手に考えさせる力があります。 ただ、読み進めるにつれ、その「抱腹絶倒」という触れ込みほどの笑いを感じることができませんでした。風刺としての切れ味は鋭いのですが、どこか距離感があるというか、感情移入しづらい部分があります。おとぎ話としても、物語としての深さに少し物足りなさを感じました。 決して悪い本ではないのですが、期待値と実際の読後感にズレが生まれてしまった、というのが正直なところです。思想書好きの自分としては、もう一段階、読み手の心に響く何かが欲しかった。