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短くて恐ろしいフィルの時代

短くて恐ろしいフィルの時代

ジョージ・ソーンダーズ / 岸本 佐知子 河出書房新社 2021年8月6日

感想

河出書房新社の新刊紹介欄で目についた本です。正直なところ、タイトルも装丁も奇想天外で、最初は躊躇しました。でも説明文を何度も読み返すうち、これは只事ならぬ作品だと感じて手に取りました。 正解でした。こんな面白い本は久しぶりです。内ホーナー国と外ホーナー国という設定だけで既に魔法のような世界観なのに、フィルという人物が現れた途端、物語が一気に生命を帯びる。彼の演説シーン、民衆の熱狂ぶり、次々と起こる奇想天外な事件の数々——全てが絶妙なバランスで調和しているんです。 何より素晴らしいのは、このおとぎ話が実は現実を鋭く風刺しているという構造です。権力、狂信、民衆心理といった重いテーマを、こんなにも軽やかに、時に失笑を誘うような荒唐無稽さで描き出す著者の力量には脱帽します。読んでいて思わず笑いが漏れそうになるのに、同時に背筋が冷たくなる不思議な感覚。 64歳になって、まだこんなに新しい読書体験ができるのかと、嬉しくもあり驚きもあります。文庫本というお手頃さもいい。迷っている方には、ぜひお勧めしたい一冊です。

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