大企業でのサラリーマン人生を送る身として、このタイトルには思わず手に取ってしまった。IT労働者が思想差別と闘いながら、いかに「峠を越えてきたのか」という人生ドラマ。同じ企業戦士の一人として興味深かったのは正直なところだ。 ただ読み終わってみると、期待値と現実のギャップに戸惑ってしまった。自伝的小説という触れ込みから、もっと具体的で説得力のあるサラリーマン人生の葛藤が描かれていると予想していたが、章立てを見ても象徴的な表現が多く、若干抽象的に感じられた部分もある。正義と利己心のはざまでもがく主人公の心理描写には共感できるシーンもあるが、全体を通しては、やや散漫な印象が残ってしまった。 話題の一冊として読んでみる価値はあると思う。特に企業内での不当な扱いを経験した方なら、より深い共感が得られるかもしれない。ただ、最後の一押しで心をつかむような迫力に欠けるのは残念だ。40代だからこそ感じる複雑な感情で、五分五分といったところだろうか。