はるとの本棚
感想

祖母を失った主人公が、新しい家族との関係の中で心の空白を埋めていく——そういうテーマだと聞いて、ゆっくり読み進めてみました。 正直なところ、期待値に対しては及ばなかったというのが率直な感想です。温かみのある日常描写や、家族関係の微妙なニュアンスは丁寧に描かれており、それ自体は悪くない。キッチンという空間が物語の中心になっているという設定も興味深い。ただ、何か心に強く引っかかるような深さや、読み終わった後に考え込まずにいられないような強度が不足している気がします。 エンジニアという仕事柄、「なぜこの展開なのか」という論理的な必然性を求めてしまうところがあるのかもしれません。それでも、キャラクターの心情遷移や物語の構成を見ていると、もう少し何かが欲しい——そんな印象を払い切れません。 悪い作品ではありませんが、わざわざ手に取るほどではないかな、という判断です。新潮文庫版も存在するようですし、他の評判を参考にしながら判断してもいいでしょう。