はるとの本棚
感想

ベストセラーということで手に取ってみたが、想像以上に引き込まれた。サスペンス小説として、登場人物の心理描写が実に丁寧で、エンジニアとしてロジカルに物事を考える習慣がある自分でも、予測の斜め上を行く展開に何度も驚かされた。 物語の仕掛けについては、よくあるトリックものではなく、キャラクターの内面にこそ本質があるという構成が秀逸だ。一見するとシンプルな状況設定から、どのようにして想像を超えた物語へと発展するのか、その過程が見事に計算されている。読み進むにつれ、序盤の描写が後半にどう繋がるのかを推測する快感がある。 ただし、ページをめくる手が止まらなくなるタイプのエンタメ小説というより、じっくり考えながら読み進める必要がある。その点で全員向けとは言いがたいかもしれない。それでも、ミステリとしての完成度は高く、読了後に「なるほど、こういう話だったのか」と納得できる満足感がある。ミステリ好きで、ある程度の読書経験がある人なら確実に楽しめる一冊だ。