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文庫版 姑獲鳥の夏

文庫版 姑獲鳥の夏

京極夏彦 / 京極 夏彦 講談社 1998年9月15日

感想

仕事の疲れを癒すために手に取った一冊だったが、予想外の深さに引き込まれてしまった。 「この世には不思議なことなど何もない」という京極堂の言葉から始まるこのシリーズ、実は理屈と感情のバランスが秀逸だ。エンジニアとしての思考癖が強い自分は、論理で世界を説明しようとする傾向がある。しかしこの作品は、一見不可解な事象を、徹底的な推理によって見事に説きほぐしていく過程が心地よい。 20ヶ月の身籠りや密室からの失踪という荒唐無稽な設定も、京極堂と関口、榎木津らのやり取りを通じて、納得できる解答へと導かれる。その過程で、古本屋という舞台設定も含めて、世界観がじわじわと立ち上がってくる。 文庫版ということで手軽に読める点も良い。ただし内容は決して軽くなく、思考の回転を要求される。むしろそこが醍醐味といえるだろう。シリーズ第1弾という信頼感もあり、今後の巻も確実に読み進めていくつもりだ。理屈好きで、でも人間の不合理さにも興味がある人なら、まず間違いなく満足できる一冊である。

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