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悼む人(上)

悼む人(上)

天童荒太 文藝春秋 2011年5月10日

感想

直木賞受賞作という触れ込みで手に取った本作ですが、期待以上の出来栄えに驚きました。 主人公の坂築静人が全国を放浪して死者を悼むという一見奇異な行動から物語は始まります。合理的なエンジニア気質の私としては、当初この設定に首をかしげていたのですが、物語が進むにつれてその行為の重みと意味が徐々に明かされていく構成が秀逸です。 特に評価したいのは、登場人物たちが複雑に絡み合い、それぞれが「生と死」「愛と傷み」とどう向き合うかを問い続ける点。記者・蒔野の視点から、読者も静人の謎に引き込まれていきます。終末期がんという設定も単なる悲劇ではなく、人生の選択について考えさせる装置として機能しています。 上巻とのことで若干の不安もありましたが、物語の牽引力が強く、続きが気になってすぐに下巻を手に取ってしまいました。緻密に構成された人間ドラマとしての完成度は高く、直木賞受賞に納得できる一冊です。