雄一の本棚
信州善光寺門前 おやすみ処にしさわ商店

信州善光寺門前 おやすみ処にしさわ商店

長月天音 徳間書店 2025年12月10日

感想

54歳になると、人生で失ったものの重さをより深く感じるようになる。この本は、そうした喪失感を抱える人たちが集う善光寺門前の小さなお宿を舞台にしている。 評判の『ほどなく、お別れです』の著者という触れ込みに惹かれて手にしたが、期待通りの一冊だった。じんわりとした優しさが全編を包んでおり、読み進める度に心が静かに癒される感覚がある。登場人物たちが抱えている心の痛みや迷いは、現在の自分たちの世代であれば誰もが共感できるものばかりだ。 何より良いのは、単に悲哀に浸るのではなく、喪失を受け入れながら前へ進もうとする登場人物たちの姿勢が描かれていることだ。そこには無理な励ましではなく、本当の希望がある。 文庫版という手軽さも魅力。仕事の帰路や休日の朝に、少しずつ読み進めるのに丁度良い。繰り返し読みたくなる、大切にしたい一冊である。

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