雄一の本棚
ストロベリーナイト

ストロベリーナイト

誉田 哲也 光文社 2008年9月9日

感想

警察小説は何度も手に取ってきたが、この作品は一線を画している。警視庁捜査一課の姫川玲子という主人公のキャラクターが実に立体的で、単なる優秀な女性刑事という枠に収まらない深みがある。 溜め池の惨殺死体から始まる事件は、一見すると典型的なミステリーの構成に思える。しかし進むにつれ、その背後に隠された複雑な人間ドラマが浮かび上がってくる。謎の言葉「ストロベリーナイト」の意味を追う過程で、登場人物たちの動機や感情が緻密に描かれ、単純な犯人追跡を超えた重厚さを備えている。 何より感心したのは、クセの強い刑事たちとのやり取りを通じて、組織内での人間関係や葛藤がリアルに描かれている点だ。54年生きてきた身として、こうした職場の空気感には思わず頷かされた。終盤の衝撃的な真実は、軽率な予測を許さない周到さで構成されている。娯楽作品としてのページターナーの質と、小説としての完成度を両立させた傑作だと断言できる。