月と蟹

月と蟹

道尾 秀介

出版社:文藝春秋 出版年月日:2013/07/10

文藝春秋 | 2013/07/10

3.33
本棚登録:4人

みんなの感想

感想

直木賞受賞という触れ込みで手にしましたが、実際に読んでみると、その評価に納得できます。海辺の町を舞台に、孤独な少年たちが繰り広げる儀式めいた遊びを通じて、大人への入口を描いた作品です。 印象的だったのは、作品全体に漂う静謐感です。派手な展開や劇的な出来事があるわけではないのに、じわじわと心に何かが積もっていくような読み心地でした。少年たちの心情描写が丁寧で、その年代特有の微妙な感情の揺らぎが、自分自身の思春期を呼び起こします。 海という存在が象徴的に機能しており、その広大さが少年たちの心情と呼応する描写も秀逸です。決して説教的にならず、読者に余白を残しながら、深い余韻を生み出しています。 一つ慎重に言えば、内容の濃密さゆえに、一度の通読では捉えきれない部分も多い気がします。改めて読み返す価値のある作品だと思います。54歳という年代で読むと、大人へ向かう少年たちの心情が、ひとしおに胸に迫ります。

感想

直木賞受賞作という触れ込みに惹かれて読んでみましたが、正直なところ期待値とのギャップを感じてしまいました。 少年たちの夏の思い出を描いた作品として、儚くも切実な世界観は確かに伝わってくるのですが、物語全体に漂う陰鬱さが終始重く、最後まで気持ちが浮上しません。話題作だからこそ、もっと普遍的な感動や人間らしい温かさを期待していたのかもしれません。 文章は丁寧で情景描写も細やかなのですが、登場人物たちの心情の動きが時折判然とせず、読みながら「ここで何が起きているのか」と少し困惑することもありました。深い余韻が残るというのが売り文句のようですが、私の場合は違和感と物足りなさが残ってしまった、という印象です。 同年代で文学好きな友人たちの間では好評のようですし、感じ方は人それぞれなのだと思います。ただ個人的には、やや難しさと陰鬱さが先に立ってしまい、もう一度読み返したいとは思えませんでした。話題作だからこそ、自分に合うかどうかは事前にしっかり見極めた方が良いかもしれません。

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