雄一の本棚
月がきれいな夜に、誰かに思い出してほしかった

月がきれいな夜に、誰かに思い出してほしかった

川代紗生 サンマーク出版 2026年3月9日

感想

人生で「二番目」であることの切実さが、これほど丁寧に描かれた作品は珍しい。54歳の人間として、人生の選別が既に終わっているであろう桃子の葛藤は、他人事とは思えませんでした。 恋愛に失敗し、親からも期待されず——そうした挫折感の中で、三軒茶屋の喫茶店で繰り広げられる日常が生き生きしていることが、この本の何よりの強みです。失恋相手との思い出の食事を埋葬するという、一見哀しいコンセプトが、実は人間関係の複雑さと温かさを照らし出しているのです。 仕事柄、人間関係に疲れることも多い身ですが、この物語には共感できる部分が随所にありました。完璧な幸福ではなく、不完全な中での繋がりや優しさの大切さを改めて感じさせられます。月がきれいな夜の描写も詩情的で、頭の片隅に残ります。 ただ、後半の展開がやや駆け足だったのが惜しい。もう少し丁寧に各キャラクターの心情を掘り下げてほしかった気もします。それでも総じて、大人が読むべき佳作だと考えます。

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