雄一の本棚
傲慢と善良

傲慢と善良

辻村深月 朝日新聞出版 2022年9月7日

感想

婚約者の失踪という設定で、一見サスペンスタッチかと思いながら手に取ったのですが、読み進めるうちに別の魅力に引き込まれました。西澤架が相手の「過去」と向き合う過程を通じて、人間関係の深さや複雑さについて考えさせられるんです。 54歳になると、人生経験からくる背景が物語を読む際の解像度を高めるのかもしれません。登場人物たちの葛藤や選択に、単なる物語以上の説得力を感じました。恋愛に関する悩みだけでなく、生き方そのものについての問い掛けが随所に散りばめられており、そこが多くの読者に支持されている理由なのだと納得できます。 文庫化に際しての朝井リョウによる解説も的確で、作品の本質をより深く理解する手助けになりました。軽い読み物ではなく、きちんと思考する力を要求してくる作品ですが、その分だけ読み終わった後の充足感があります。慎重に作品を選ぶ身としては、この一冊はお勧めできる出来だと感じています。

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