母性
新潮社 | 2015/06/26
みんなの感想
慎重に手に取った一冊だったが、その判断は正解だった。 母親の手記と娘の回想が交錯する構成で、一つの事件へと迫っていく手法は見事というほかない。表面的な「愛」の物語ではなく、家族関係のより深い部分——言葉にならない感情や時間の経過とともに変わっていく関係性——に真摯に向き合った作品だ。 読み始めた時点では事件の真相に引き込まれるだろうと予想していたが、実際に深まるのはそれ以上に「なぜそれが起きたのか」という問い掛けだ。十一年前の台風の日から現在までの時間の重みが、丁寧に描写されていく。完璧だと思い込んでいた親子関係にも、見落とされた隙間があったのではないか——そうした疑問が次々と浮かぶ。 中年になった今だからこそ、親としての視点と子としての視点の両方で考えさせられる内容だった。「母性」というタイトルが指し示すものが、単純ではなく、むしろ複雑で痛みを伴うものであることが、静かに心に響く。新潮文庫の判型で何度も読み返したくなる傑作である。
SNSで話題になっていたので手に取ってみたのですが、期待以上でした。母と娘という古くからあるテーマなのに、こんなに新鮮な切り口で描かれるんだと驚きました。 物語は女子高生が自宅で倒れているところから始まります。それが事故なのか自殺なのか、世間の推測が渦巻く中で、母の手記と娘の回想が交錯しながら真実へと近づいていく構成。この手法が本当に秀逸で、同じ出来事でも見方によってこんなにも違って見えるのかという驚きを何度も味わいました。 公務員という職業柄、つい社会的な「正解」を求めがちな思考癖がある私ですが、この本を読んでいて、その思考がどれだけ危険かを痛感させられました。親が「正しい」と思って与える愛情も、受け取る側によっては全く別のものになり得るんだという、複雑な人間関係の真実が静かに迫ってきます。 繊細で、でも力強い筆致。今年読んだ本の中でも特に心に残る一冊です。話題本というだけでなく、本当に読む価値のある作品だと思いました。
母と娘の関係をテーマにした作品ということで、レビューを参考にしてから購入してみました。正直なところ、期待と現実のギャップを感じてしまった一冊です。 母の手記と娘の回想が交錯する構成は面白いし、事故か自殺かという謎めいた設定も引き込まれます。ただ、読み進めていくと、その謎解きのプロセスが少し単調に感じてしまいました。母親の視点と娘の視点が出てくるのに、二人の距離感が深く掘り下げられていない印象を受けたんです。 「圧倒的に新しい」というコピーに惹かれたのですが、実際には既に多くの作品で扱われているようなテーマの枠を、そこまで大きく出ていないような気がします。文章自体は丁寧で読みやすいので、その点は◎です。 短編集や軽めのノベルに慣れた身としては、もう少し心がえぐられるような衝撃が欲しかった。悪くはない作品ですが、わざわざ選んでまで読む必要があったかな…という感じです。
話題の本ってことで手に取ってみたんですけど、正直ちょっと期待と違いました。母と娘の関係を掘り下げた作品らしいんですが、展開が重くてダークすぎるというか…。高専の勉強で疲れてるときに読むには、メンタルがキツイです。 文章自体は上手なんだと思うんですが、母親の手記と娘の回想が交互に出てくるのが読みにくくて。頭を切り替えないといけないから集中力がいるし、ラノベみたいにサクサク読める本ではないですね。 話の構成としては気になるポイントが多くて、真実がどこにあるのかは引き込まれるんですけど、後半の展開がちょっと納得いきませんでした。「母性」ってテーマを掘り下げたかったんだろうけど、読後感があまりスッキリしない。むしろ重ーく沈んだ感じで終わります。 深い作品を求めてる人には良いかもしれませんが、気軽に読みたい僕には合いませんでした。もっと後味がいい本の方が好きです。
母と娘の関係を深く掘り下げた作品だ。女子高生が倒れるという衝撃的な事件から始まり、そこに至るまでの十一年間の経緯が母の手記と娘の回想という二つの視点から丁寧に綴られていく。 構成の巧みさに引き込まれた。一見すると完璧な親子関係に見えるものが、実は複雑な感情の層を持っていたことが少しずつ明かされていく。その過程で、愛することと支配することの境界線がいかに曖昧であるかを思い知らされる。 フリーランスとして不規則な生活を送る身として、親子関係についてあらためて考えさせられる部分が多かった。読み始めてから最後まで、登場人物たちの心理に引き込まれ、何度も立ち止まってしまった。結末は予想外でありながらも必然性を感じさせる。 新書判だから手軽に読める点も良い。ただし内容は重いので、気分が沈んでいる時期よりは、精神的に落ち着いている時に読むことをお勧めしたい。現代の家族関係について問い直したい人には、特に価値のある一冊だと思う。
母と娘の関係ってこんなに複雑なんだ、と改めて考えさせられました。表紙のフレーズに惹かれて手に取ったんですが、予想をはるかに上回る深さでした。 女子高生が倒れているシーンから始まるミステリアスな展開で、ぐいぐい引き込まれます。母親の手記と娘の回想が交互に現れることで、同じ事実が全く違う角度から見えてくるんです。その過程で、愛情とは何か、親子関係とは何かっていう根本的な問いが浮かんでくる。 特に良かったのは、どちらかが悪いという単純な構図ではないところ。親として子どもを思う気持ちと、子どもが感じる圧迫感や違和感──それらが同時に存在し得るという、なんとも息苦しくも現実的な世界観が描かれています。読み進めるにつれて、登場人物たちへの見方がくるくる変わる感じが気持ちいい。 自営業で親としての責任を感じることもある身として、この本が問いかけてくるものが心に響きました。重い内容ですが、ページをめくる手が止まりません。
母と娘の関係をめぐるミステリーということで、手に取ってみました。冒頭の衝撃的な事件から始まり、母の手記と娘の回想が交互に語られていく構成は、確かに工夫されているなと感じました。 ただ正直なところ、読み進めていくうちに何か物足りなさを感じてしまったんです。十一年前の台風の日という回想シーンが鍵になるようですが、その後の展開が予想の枠を大きく出ないというか。母性という大きなテーマを掲げているわりに、描き方がやや浅い印象を受けてしまいました。 短編集のような軽さで読める文庫版ですし、通勤時間の合間に気軽に読むにはちょうどいいボリュームです。キャラクターの心情描写もきちんとしていますし、物語として完成度は高い。ただ、「ああ、面白かった」と心に残るほどの何かが足りないというのが率直な感想です。母と娘のズレや葛藤を深掘りしてほしかったかな、という気がします。