雄一の本棚
20代で得た知見

20代で得た知見

F KADOKAWA 2020年9月19日

感想

54歳になると、人生経験が積み重なって、若い頃のような急速な成長の感覚がなくなってくる。だからこそ、この本で語られている「20代で得た知見」という切り口に引き込まれた。 著者が拾い集めた断片的な気づき——友人の一言、恋人のふとした台詞、都会の景色——こうしたものが人生を決定しているという視点は、非常に誠実だと感じた。決して派手な教訓や成功法則ではなく、生きるうえで誰もが経験するはずの、でも言語化しづらい瞬間を丁寧に掬い取っている。 慎重な性質の私は、この手の本を読む際、どうしても「実用性はあるのか」と考えてしまう。しかし本書は、そうした打算的な読み方を優しく拒否する。むしろ「完全からの出発」ではなく「不完全からの出発」という第1章のテーマそのものが、年を重ねた読者にとって深い慰めになる。 断片的な構成ゆえ、連続して読むというより、時間をかけて何度も立ち返りたくなる一冊。人生のある局面で、ふと開きたくなるような質感をもった本だ。

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