ダ・ヴィンチの受賞作ということで手に取ってみたんですが、これは本当に面白い。直木賞に執着する作家を主人公にした設定だけで既にキャッチーなのに、その心理描写の切実さたるや。 エンジニアとして仕事してると、評価と認可って別モノなんだっていつも思うんですよ。どんなに良いコード書いても、上司に気に入られるかどうかで人事評価が決まったりする。そういう理不尽さと不可解さが、この主人公・天羽カインのキャラに凄くリアルに感じられた。 ベストセラー作家なのに正当な評価を受けられない苦悶って、実は誰もが多かれ少なかれ持ってる感情なんだと気づかされます。それを爆発させるような破壊的な情熱で物語が突き進んでいく快感。登場人物たちの言動が時に理不尽だけど、その狂い方がどこか納得できてしまう。 気軽に読める小説として最高。エンタメ性も高いし、人間の欲望とプライドについて考えさせられる奥深さもある。気になってた人には本当にお勧めです。
最近登録された他の本の感想
2026年08月22日
仕事も恋愛も家庭も、全部欲しい—そういう欲望ってタブー視されがちだけど、この作品はそこにちゃんと向き合ってる。シングルマザーの志絵が大学生の蒼葉との関係を娘に告げるシーンから始まるんだが、その後の家族の葛藤の描き方がすごくリアルだ。 エンジニアとして働いてると、人生って結構複雑な選択の連続だと感じるんだ。仕事か家庭か、みたいな二者択一じゃなくて、その間で揺らぎながら生きてる人間の方が圧倒的に多い。この小説は登場人物たちがまさにそういう「六、四」「二、八」で生きてる現実を丁寧に描いてる。 母親として、恋愛する大人として、作家として—志絵が複数の顔を持ちながら揺れ動く姿が、どこか必死で、でもどこか潔い。完璧さを求めない生き方の中に、むしろ人間らしさがあることに気付かされた。気軽に読める長編ながら、心に残る問題提起がある。最後まで引き込まれた。
2026年08月21日
シリーズも13巻目ということで、そろそろ盛り上がりのクライマックスを期待して手に取ったんですが…正直なところ、ちょっと物足りなさが残りました。 ゲーム知識を活かして自由に生きるというコンセプトは相変わらず面白いし、武術大会という舞台設定も悪くない。でも、今回はお見合いイベントから大会本戦まで、全体的にストーリーが駆け足で進んでしまった感じがします。複雑な思惑が絡むはずの九条家との関係も、もっと掘り下げてほしかったところ。 最終的には友人キャラとの対決という期待のシーンも、描写や心理描写の深さで少し物足りない。エロゲ主人公とのチート能力の差みたいな部分も、もう少しスリリングな緊張感がほしかった。シリーズを追い続けている身としては、ここまで来たら完結に向けてもっと丁寧に話を運んでくれる方が嬉しいんです。 エンタメとしては十分読めるんですが、13巻目という地点での期待値には届かなかった、というのが正直な感想ですね。
2026年07月12日
新文芸誌『GOAT』の第2号、やっぱり買ってしまいました。前号の売上が5万部だというのも気になったし、「悪」という特集テーマも興味深かったんです。 実際に手にとってみると、朝井リョウから冲方丁まで、豪華な執筆陣がずらりと並んでいて圧倒されます。エンジニアの仕事で頭を使った後は、こういう濃密な短編集がちょうどいいんですよね。軽すぎず、でも気楽に読める。 「悪」というテーマを通してこれだけ多角的な視点を集めたというのは、企画として本当に面白い。佐藤究とマライ・メントラインの鼎談も読みごたえがあって、知的好奇心をぐっと刺激されます。武田砂鉄のエッセイも含め、小説だけじゃなく論考も質が高いのが印象的。 「私のGOAT本」コーナーで様々な著者たちがそれぞれの人生を変えた一冊を紹介しているのも素敵。こういう本との出会いの話を読むと、次に何を読もうかなって思いますね。 正直、文芸誌ってとっつきにくいイメージもありましたが、この雑誌の作り方は本当にいい。今後の号も見守りたい作品です。
2026年07月11日
江戸時代の一大裁判劇というテーマに惹かれて手にとりました。宝暦年間の実在した事件を題材にしているということで、歴史ロマンを感じながら読み進めました。 確かに舞台設定や事件の展開は興味深いんですが、正直なところ、読んでいてちょっと息切れしてしまった感じです。登場人物が多くて、関係性を把握するのに時間がかかるし、法廷ドラマとしての緊迫感が思ったほど高まらなかった。同じエンジニアという立場だからかもしれませんが、複雑な情報を整理しながら読むのは得意なはずなのに、この作品だと少し退屈に感じてしまいました。 描写は丁寧で、江戸の空気感は十分に伝わってくるし、筆力も確かなものです。ただ、一気読み必至というキャッチコピーほどの魔力は感じられなかったというのが本音。歴史冒険小説として気軽に楽しむなら悪くない選択肢ですが、特別に心を掴まれるほどではないですね。休日にのんびり読むにはちょうどいいくらいでしょうか。
2026年07月08日
シリーズもついに5巻目。毎回のセオリー通りに派手な戦闘が繰り広げられるかと思いきや、今巻はスフェーニアの背景にしっかりスポットが当たるようになってて、キャラクター周りの掘り下げが想像以上に面白かった。 エルフの奥里という新しい舞台設定も、単なる背景ではなく物語に深く関わってくる重要な場所として機能してるのが良い。そして何より、新たに登場する『黄昏の眷族』との関わりが、これまでのテンプレートを気持ちよく裏切ってくれる。最初は予想通りの流れかと思ったけど、中盤以降で「あ、そう来るか」って感じで引き込まれた。 おっさんこと主人公のソウシも、単に強いだけでなく、その強さの源泉が物理特化という地味だけど一貫した個性として磨かれていく過程が面白い。派手さだけを求めてる時もあるけど、こういう泥臭い成長物語も嫌いじゃない。気軽に読むラノベとしては充分以上のレベルだと思う。続きが気になります。
2026年06月15日
ふと手に取った文庫本だったけど、これが想像以上に心に来た。著者が拾い上げた「ささやかな記憶の断片」って、本当にそういうものなんだなって改めて感じさせられた。 仕事で疲れてるときとか、人間関係でモヤモヤしてるときって、大事なのは壮大な何かじゃなくて、こういった細やかな思い出なんだ。母親の「体に気をつけなさい」という言葉、駄菓子屋のじいさん、五反田での知らない男との出会い——どれも特別じゃない日常の瞬間なのに、そこに確かな温かさがある。 エッセイだから肩ひじ張らずに読めるのも良い。むしろサラッと読めるからこそ、その後ジワジワと効いてくる感じがある。大橋裕之のマンガとBE:FIRSTのLEOさんのエッセイも入ってるというのが面白い企画だなと思った。 人生で何度も「あの時のあの場面」を思い出すことってあるじゃない。そういう瞬間の価値を改めて認識させてくれる本。38にもなると、昔のことを思い出す頻度も増えるんだけど、この本を読んでそれでいいんだと思えた。素直に好きだ。
2026年06月13日
仮面ライダーリバイスの番外編ということで、気軽に手に取ってみました。本編では描かれなかった「if」の世界線を描くコンセプトは面白いですね。主人公が別人だったら、兄弟たちの運命がどう変わるのか、そういう想定の世界を読む楽しさは確かにあります。 ただ、正直なところ、別の適合者を中心にした物語というのは、本編との比較があるからか、どうしても「if版」という枠を超えられていない印象を受けました。キャラクターたちの掘り下げや、新しい視点から見た世界観の展開があれば、もっと引き込まれたと思います。 脚本を手がけた木下半太のオリジナル展開という点では、その個性は感じられるんですが、小説化の過程で何か物足りなさが残ってしまったというか。エンジニアである自分としては、設定の論理的な一貫性を求めてしまうのかもしれませんが。 気軽に読む分には悪くないんですが、特別に心をつかまれるような瞬間がなかったというのが正直な感想です。ファンなら読んで損はない程度だと思います。
2026年06月10日
三島由紀夫の最後の長編『天人五衰』をようやく読み終わった。正直なところ、これまで三島作品に苦手意識を持っていたのだが、この本は違った。 豪華絢爛な世界観と、その中に潜む人間の本質的な衝動が絶妙に絡み合っている。登場人物たちが織りなすドラマは、一見すると華麗だが、よく読むと深刻な精神の危機を描いているんだ。エンジニアとして論理的に物事を考える習癖がある自分にとって、むしろそういう混然とした人間の欲望や矛盾を見つめる視点は新鮮だった。 文庫本という手軽なフォーマットも功を奏したのか、通勤時間や休憩時間にコツコツ読み進められた。章立てごとに観点が変わっていく構成も、飽きさせない工夫として感じられた。 終盤の不可思議な展開は、最初は理解に苦しむかもしれないが、そこがこの作品の核なんだと思う。三島という作家をあらためて評価し直すきっかけになった一冊だ。
2026年06月10日
現代人に必要な思考とはなんだろう。そう問いかけてくる本書を手に取ったのは、SNS疲れが溜まっていた時期だった。敵と味方を分けず、違う者同士が本当にコミュニケーションできるのかという問題提起は面白い。確かに、合わない人を単純に排除する人生は楽だけど、何か大切なものを見落としているような気もする。 ただ正直なところ、その先の答えまで辿り着けなかった感じがする。エッセイとしての個人的な体験や洞察は随所に光るんだけど、「喧嘩しよう」「コミュニケーションを取ろう」という提案が、どこか抽象的で掴みどころがない。実際の人間関係の複雑さに比べると、やや理想論で押し切られてしまっているというか。 エンジニアのキャリアでも同じなんだが、何か課題解決には具体的な方法論が必要だ。思考の転換はいい。でも、その後どう動くのか、何から始めるのか。そこまで示してくれると、もっと響く本になったんじゃないかな。気軽に読める文体は好きだし、時々ハッとさせられる箇所もある。でも物足りなさが残るんだよね。
2026年06月08日
2020年代前半の日本で蔓延した違和感を、言葉の鋭さで切り裂くエッセイ集。著者の苛立ちが心地よく、ページをめくるたびに「あ、そういうことか」と納得させられる。 「外出を控える」「コロナ後の世界」といった陳腐化した表現が、なぜこんなに不快なのか。その理由を丁寧に—時には執拗に—掘り下げていく様は、エンジニア的な思考回路にも響く。曖昧さを許さない論理の進め方が爽快感を生む。 各エッセイは短編のようなボリュームなので、仕事の合間に気軽に読める。難しい理論ばかりではなく、「ボロとは何か」といった日常の疑問から入ったりと、読み口も軽い。ただし「軽さ」とは裏腹に、言葉への執着は本気だ。 最近の世相に対してモヤモヤしているなら、この本は気持ちの整理を手伝ってくれる。特に言葉を扱う仕事をしている身としては、言語感覚が研ぎ澄まされる気分。気軽に読める良著です。
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