重箱のすみから
筑摩書房 | 2026/02/12
みんなの感想
2020年代前半のモヤモヤとした息苦しさを、これほどまで言葉にしてくれた本に出会うのは久しぶりです。 著者の苛立ちが随所に感じられるのですが、それがただの愚痴に終わらず、深い思考へと昇華されているところが素晴らしい。「外出を控える」という言葉が蔓延していた時代、その言葉が何を隠しているのか、何を切り落としているのかを丁寧に問い直す。政治家の言葉、医者の言葉、小説家の言葉—様々な立場からの発言を検証する中で、「センス」と「センシビリティ」の喪失が浮き彫りになっていく。 会社員生活が長くなるほど、言葉が磨耗していくのを感じることが増えてきました。この本を読むと、その痩せた言葉たちの背後にある構造が見えてくるような気がします。決して読みやすくはありませんが、だからこそ頭を使って考える楽しさがある。10年ぶりの時事エッセイということですが、その価値は充分。むしろ、今この時代だからこそ読むべき一冊だと感じます。
2020年代前半の日本で蔓延した違和感を、言葉の鋭さで切り裂くエッセイ集。著者の苛立ちが心地よく、ページをめくるたびに「あ、そういうことか」と納得させられる。 「外出を控える」「コロナ後の世界」といった陳腐化した表現が、なぜこんなに不快なのか。その理由を丁寧に—時には執拗に—掘り下げていく様は、エンジニア的な思考回路にも響く。曖昧さを許さない論理の進め方が爽快感を生む。 各エッセイは短編のようなボリュームなので、仕事の合間に気軽に読める。難しい理論ばかりではなく、「ボロとは何か」といった日常の疑問から入ったりと、読み口も軽い。ただし「軽さ」とは裏腹に、言葉への執着は本気だ。 最近の世相に対してモヤモヤしているなら、この本は気持ちの整理を手伝ってくれる。特に言葉を扱う仕事をしている身としては、言語感覚が研ぎ澄まされる気分。気軽に読める良著です。
10年ぶりの時事エッセイ集という触れ込みに惹かれて手に取った。2020年代前半の日本社会への著者の違和感や苛立ちを綴ったもので、確かに鋭い指摘も散見される。言葉の痩せ細り方、メディアで無反省に繰り返される定型句への批判眼は評価できる。 ただし、読み進めるにつれ、いくぶん散漫な印象が拭えない。個々のエッセイは短く、テーマも多岐にわたるため、一つの議論が十分に深掘りされないままに次へ移ってしまう。著者の不満の根拠は理解できるのだが、それがどこへ向かうのか、何を示唆するのかが曖昧に感じられてしまう。 政治評論でもなく、文化批評でもなく、むしろ時代への個人的な呟きの集合といった体裁で、その潔さはある。だが同時に、読者としては「では、どうすればよいのか」という問いへの応答を期待してしまう。それが得られない点が、やや物足りない。悪くない本だが、傑作とまでは言えない所以だ。
ここ数年、ニュースを見ていてもなんだか言葉が空虚に感じることってありませんか。この本を読んで、その違和感の正体が少し見えた気がします。 著者の鋭い指摘は、コロナ禍を中心とした2020年代の日本社会で繰り返された「愚直な言葉たち」に向けられています。時事エッセイというと堅くて難しいイメージを持っていたのですが、これはそうではありません。日常の中で感じるモヤモヤを、読みやすい文体で丁寧に言語化してくれる。家事の合間に読むには本当にちょうどいい。 特に「いつの間にか忘れられてしまうこと」という章立てが心に残りました。私たちって、本当に大事なことほど忘れてしまう生き物なんだなって。短編のようにまとめられた各エッセイが独立しているので、気が向いた時に好きなところから読める気軽さも魅力です。 ただ、時々ちょっと難しい批評的な視点も混じるので、そこは読み込むのに時間がかかりました。でも「何かおかしい」と感じている人には、必ず心に響く言葉が詰まっていると思いますよ。