むしの本棚
重箱のすみから

重箱のすみから

金井 美恵子 筑摩書房 2026年2月12日

感想

2020年代前半の日本で蔓延した違和感を、言葉の鋭さで切り裂くエッセイ集。著者の苛立ちが心地よく、ページをめくるたびに「あ、そういうことか」と納得させられる。 「外出を控える」「コロナ後の世界」といった陳腐化した表現が、なぜこんなに不快なのか。その理由を丁寧に—時には執拗に—掘り下げていく様は、エンジニア的な思考回路にも響く。曖昧さを許さない論理の進め方が爽快感を生む。 各エッセイは短編のようなボリュームなので、仕事の合間に気軽に読める。難しい理論ばかりではなく、「ボロとは何か」といった日常の疑問から入ったりと、読み口も軽い。ただし「軽さ」とは裏腹に、言葉への執着は本気だ。 最近の世相に対してモヤモヤしているなら、この本は気持ちの整理を手伝ってくれる。特に言葉を扱う仕事をしている身としては、言語感覚が研ぎ澄まされる気分。気軽に読める良著です。