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重箱のすみから

重箱のすみから

金井 美恵子 筑摩書房 2026年2月12日

感想

10年ぶりの時事エッセイ集という触れ込みに惹かれて手に取った。2020年代前半の日本社会への著者の違和感や苛立ちを綴ったもので、確かに鋭い指摘も散見される。言葉の痩せ細り方、メディアで無反省に繰り返される定型句への批判眼は評価できる。 ただし、読み進めるにつれ、いくぶん散漫な印象が拭えない。個々のエッセイは短く、テーマも多岐にわたるため、一つの議論が十分に深掘りされないままに次へ移ってしまう。著者の不満の根拠は理解できるのだが、それがどこへ向かうのか、何を示唆するのかが曖昧に感じられてしまう。 政治評論でもなく、文化批評でもなく、むしろ時代への個人的な呟きの集合といった体裁で、その潔さはある。だが同時に、読者としては「では、どうすればよいのか」という問いへの応答を期待してしまう。それが得られない点が、やや物足りない。悪くない本だが、傑作とまでは言えない所以だ。

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