lit_diaryの本棚
感想

孫娘がいるせいか、児童文学への目線が変わってきた。この作品も彼女の図書室推薦リストに載っていたのだが、手に取って良かったと思う。 12歳の少女が経験する不可思議な出来事を描いた作品だが、単なるファンタジーではなく、その奥底に流れる深い感情の揺らぎが丁寧に拾われている。タンポポとウサギという一見ほのぼのとしたイメージながら、主人公が目にした世界の描写は実に詩的だ。 自営業で何十年も生きていると、現実と幻想の境界線について考えることがある。この作品はそうした問いを自然な形で読者に投げかける。子ども向けとされているが、むしろ人生経験を積んだ者にこそ心に響く要素が満載だ。成長期の揺らぎ、不安、そして小さな魔法のような救い——どれもが丁寧に編まれている。 文体の優雅さも特筆すべき点。教訓くさくならず、子どもの視点と大人の感受性のバランスが見事に取れている。人文的な営みとしての児童文学の可能性を改めて感じさせられた一冊である。