地政学的な緊張をテーマにした作品ということで手に取ってみました。竹島をめぐる紛争という現代的なシナリオから始まる物語で、確かに興味をそそられます。 ただ、読み進めてみると、構成の巧みさや深い人物描写といった点で、もう一歩という感じでしょうか。海戦シーンはそれなりに迫力があるんですが、ストーリー全体としては予測可能な展開が多く、「ああ、こうなるんだろうな」という読み心地でした。エンジニアとして複雑なシステムの設計には関わりますが、小説の構成もある種の設計だと思うんです。その観点だと、もう少し意外性や登場人物の動機づけに工夫が欲しかった。 新書というコンパクトなフォーマットということを考えると、限られた紙幅の中での工夫は感じられるのですが、むしろ短編として徹底するか、もっと長編として深掘りするか、どちらかに振り切った方が良かったのではという印象です。気軽に読める一冊として悪くはないんですが、特に記憶に残る瞬間がない、そんな感じですね。
最近登録された他の本の感想
2026年08月01日
東野圭吾の最新作ということで期待して読み始めたんですが、正直なところ「可もなく不可もない」という感じに落ち着きました。 2017年と1984年を行き来する構成や、複数の事件が絡み合う設定は興味深いんです。プログラミングで複数の処理が並行して走るような感覚で、その絡み合いがどう収束するのかと期待しながら読み進められました。ただ、中盤から後半にかけて、その複雑さが必ずしも物語を深くしていない感じを受けてしまった。 テーマとして「罪と罰」を掲げているだけあって、主人公の告白と動機について深く掘り下げようとしているんでしょう。でも、読み終わった時点で「結局何が言いたかったのか」という疑問が残ってしまいました。仕事で疲れてる時に読むにはちょうどいいボリュームですが、もう一度読み返してみたいとは思わないかな。東野圭吾の傑作『白夜行』のような衝撃が欲しかった。
2026年08月01日
文庫本は手軽に読めるというのが魅力だと思っていて、このサマーセット作品も通勤時間にちょうどいいペースで読み進められました。ただ、正直なところ、特に引き込まれるような強い感動は得られませんでした。 登場人物たちの関係性や物語の展開は丁寧に書かれているんですが、どこか期待していた以上のインパクトがなくて。読んでいる間は悪くないな、と思うんですけど、読み終わった後に心に残るものがあまり感じられないというか。エンジニアの仕事をしながら読むには負担がないのはいいのですが、だからこそ、もう少し心をつかむ何かが欲しかった気がします。 物語自体は完成度が高いと思うし、嫌いではないんです。ただ、わざわざ手に取ってもう一度読みたいかと言われると…という感じでしょうか。時間に余裕がある時に気軽に読むなら、まあ悪くない選択肢だと思います。
2026年07月17日
育児って大変だなあ、と思いながら読み始めたら、途中から引き込まれてしまった。杏さんが3人の小さな子供たちを連れてパリに行く、その大胆さと行動力に正直驚いた。エンジニアとしてのキャリアを築きながら、家族との時間を大切にする姿勢が随所に感じられて、自分自身の働き方や人生の優先順位について改めて考えさせられた。 何より良いのは、この本が単なる旅行記ではなく、子供たちの成長と親自身の変化を丁寧に描いているところ。ベビーカー2台での移動という現実的な課題から、パリで感じた「風通しが良くなった」という感覚まで、リアルで率直な描写が心に響く。気軽に読めるエッセイながら、深い思考が込められている。 気張らない文体で、でも大切なことを伝えてくる。こういう本、エンジニアの日常生活にはなかなか出会えないから、新鮮だった。子供がいない人にも、子育ての大変さと喜びの両方が伝わってくる。休日にゆったり読むのに最適な一冊です。
2026年07月05日
久しぶりにクリスティの作品に手を取ったんですが、やっぱり上手いなって改めて感じました。シンプルな設定—ABCという文字で繋がる連続殺人—なのに、これほど引き込まれるとは。 仕事で疲れた日の夜、軽い気持ちで読み始めたんですけど、気づいたら一気読みしてました。ポアロの推理の進め方が見事で、犯人を特定しようと自分も一緒に考えてしまう。新訳版ということで、現代的な読みやすさを保ちながらも、ミステリの本質的な面白さはしっかり活きている感じですね。 特に面白かったのは、予告状という仕掛けを活かした緊張感。次々と起きる事件の中で、ポアロがどう真実に辿り着くのか、その道筋を追うのが本当に楽しい。エンタメ小説として完成度が高いです。 古典的なミステリながら、今読んでも新鮮さを失わないあたりが名作たる所以なんだと思います。気軽に楽しめる傑作を探してる人には、ぜひ一冊。
2026年06月28日
言葉に関する本というので気軽に手に取ってみたんですが、正直なところ期待していたほどではありませんでした。 人間関係や日常の中で言葉が果たす役割について掘り下げるという触れ込みだったので、さくっと読めるエッセイ集かと思ったんです。でも実際に読んでみると、議論がやたらと抽象的で、読み進めるのに結構な集中力が必要。仕事で疲れた夜に「気軽に読もう」という当初の目論見は見事に外れました。 面白い指摘もところどころあるんですよ。言葉への渇望という人間の本質的な部分に触れようとする意図は伝わってくる。ただ、その道筋があまりに複雑というか、著者の思考の跳躍についていくのが大変で。もう少し具体例を増やすとか、構成を整理するとか、読み手への親切さがあればなあと感じました。 ページ数の割に読了時間がかかりすぎたのが、やや不満なところです。もうちょっと噛み砕いた書き方だったら、人文系の本をあまり読まないエンジニアにも響いたんじゃないかな。
2026年06月18日
捨てられない物ってありますよね。僕も机の引き出しには十年物の文房具が眠ってるし、思い出のTシャツも何枚か保管してある。そういう「モノとの関係性」をテーマにした短編集だと聞いて、思わず手に取ってしまいました。 期待通り、というか期待以上に良かった。伊坂幸太郎や三浦しをん、吉本ばななといった豪華な顔ぶれが、本当に様々な角度からモノと人間の繋がりを描いている。共通のテーマなのに、各作家の個性がしっかり出ていて飽きさせない。どの作品も短編とは思えないほど深い世界観があります。 プログラマーとして日々新しい技術を追う仕事をしていると、ついつい「古い物は要らない」という思考に陥りがち。でもこの本を読んでいると、捨てられずにいるモノたちの背後にある人生の痕跡が見えてくる。そういう視点の転換がいいんです。仕事終わりのリラックスタイムに、何編か読んでは思い出に浸る。そんな読み方もできる一冊。読み終わったら、本当に部屋の片隅のモノたちが愛おしく感じました。
2026年06月13日
火花から10年、又吉直樹がこんな作品を書いてくるとは。読み始めたらもう止められませんでした。 高校時代の友人との借金トラブルから人生が急転直下する——これだけ聞くと重い話に思えるんですが、そこが面白い。窮地に追い込まれていく主人公の岡田が、なぜか笑わせてくれるんですよ。人間のもろさと、そこからはみ出す何とも言えない逆転劇。仕事で論理的に考えることが多い身としては、こういう「理屈じゃない部分」で人生って動いてるんだなって改めて実感させられました。 道頓堀での再会シーンから物語が加速していく緊張感も最高です。貸した金を取り戻そうとする岡田の必死さと、その過程で見えてくる人間関係の複雑さ。「生きる」ってこういうやりきれなさとおかしさが混在してるんだなと。エッセイのような感覚で読める小説作品、本当に久しぶりに出会った気がします。気軽に手に取ったら予想以上に引き込まれました。
2026年06月13日
警察小説シリーズの書き下ろし新作とのことで、手に取ってみました。顔と指紋が潰された被害者、失踪した借主、空のUSBメモリ——これだけの手掛かりで五年前の事件を追う沖田と西川の執念の捜査が、ページをめくる手を止めさせません。 仕事柄、論理的な思考が習慣化してしまう身としては、この本の描き方が心地よかったんです。限られた情報から事件の全貌へと辿り着く過程が、デバッグ作業に通じるものがあって。それなのに単なる知的パズルに留まらず、登場人物たちの人間臭さや葛藤が丁寧に描かれているのが秀逸です。 シリーズ十四弾という積み重ねが生きていて、キャラクター設定の奥行きや現実感が素晴らしい。テンポよく読み進めながらも、随所で考えさせられるエピソードが挟まり、バランスの取れた傑作だと思いました。気軽に楽しめる警察小説として、最高峰の出来だと感じます。
2026年06月11日
仕事帰りにドラマ『良いこと悪いこと』にハマってしまい、思わずシナリオブックを買ってしまいました。正解でした。 TV放映時に話題になった伏線の数々が、シナリオで改めて読むとまた違う味わいで浮かび上がってくるんですよね。画面では気づかなかった細かい描写や、セリフの言外の意味が文字で改めて見ると「あ、そういうことか」って納得できる。エンジニアの僕からすると、ドラマの設計図を見ているような感じで、けっこう面白いです。 何より脚本家とプロデューサーの対談が秀逸。なぜこのシーンをこう作ったのか、主題歌の選曲理由、ボツになったエンディング案など、制作サイドの思考が垣間見える。SNSで白熱した考察の答え合わせもできるので、あの議論は何だったんだ、という疑問もスッキリします。 ドラマを見た人なら絶対買って損なし。もう一度ドラマを見直したくなる、そういう一冊です。
2026年06月11日
有栖川有栖のファンなら買って損はないんじゃないかな、というのが率直な感想です。火村英生や江神二郎といった彼の作品に登場する探偵たちについて、作者自身がどう思っているのかを知れるロングインタビューは興味深い。書き下ろし短編も含まれているし、書斎紹介なんかは、執筆環境を知ることで作品がより深く読めるようになるかもしれません。 ただ、既に有栖川作品をたくさん読んでいる人間にとっては、対談や特集記事の再録が多いせいか、特に新鮮な驚きはありませんでした。本編の小説というより、著者論や評論が中心なので、もう一段階踏み込んだ創作秘話を期待していた自分としては、やや物足りなかった部分も。 エンジニアの仕事の息抜きに気軽に読む分には、ちょうどいい分量だし、好きな作家について知識を深められるという点では悪くない。ただ、これまで以上にハマるきっかけになるかというと、微妙なところですね。有栖川本人のファンには手に取る価値ありです。
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