はるとの本棚
感想

就活という限られた期間の中で、複数の自分を演じ分ける大学生たちの姿を描いた作品だ。エンジニアとして働く身からすると、彼らの「自分を売る」葛藤は、採用面接や職場での自分の見せ方という形で、今も自分の中に生きている問題として響いた。 著者は登場人物たちの思考の揺らぎを丁寧に追っていく。SNSと現実のギャップ、建前と本音の衝突、そうした普遍的なテーマが、就活というステージを通じて研ぎ澄まされている。特に印象的なのは、誰が善悪かはっきりしない人間関係の描き方だ。登場人物たちは完全な被害者でもなければ加害者でもなく、みな何かを抱えながら前に進もうとしている。 読み終えて思うのは、自分たちの世代が経験した就活と、その先の人生の迷い方がこんなにも変わっていないのかということ。年月が経っても、人間の本質的な不安や模索は繰り返されるのだろう。文学的な表現と心理描写のバランスが優れており、一気読みできる面白さがありながらも、後味として深い考察が残る。慎重に作品を選ぶ方なら、この一冊の価値は十分あると思う。

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