センスというと、生まれつきの才能だと思い込んでいたけれど、この本を読んで考え方が変わった。著者は「ハッとする力」を体系的に分解して、それが学習可能なスキルであることを示してくれている。 エンジニアとしてロジカルに物事を考える癖がついているぶん、デザインやコミュニケーションの世界はどうしても苦手意識があった。だが本書では、センスも「構造」があることが丁寧に説明されている。その構造を理解すれば、意識的に高めていけるという主張は、かなり説得力がある。 具体例が豊富で、街中のポスターやSNSの事例など、日常で実際に目にするものばかり。だからこそ、読んだ後は周囲を見る目が変わる。技術的な知識を学ぶのとは違う、新しい感覚が研ぎ澄まされる感じだ。 強いて言えば、理論的な部分はもう少し掘り下げてほしかった。ただ、ビジネス書としてのバランスは取れていると思う。自分のセンスに自信がない人にはぜひ勧めたい一冊。
最近登録された他の本の感想
2026年08月10日
正直なところ、マンガはあまり読まないジャンルなのですが、このシリーズは予想外に引き込まれました。 古典の「かぐや姫」を現代風にアレンジし、さらにVRやライバー配信という最新技術を組み合わせた設定の面白さが目立ちます。エンジニアとしては、仮想空間「ツクヨミ」の描写にも興味をそそられました。ただし、作品はそうした技術的な側面に頼るのではなく、二人のキャラクターと彼女たちの絆をしっかり軸足に置いているのが良い。 彩葉とかぐやの掛け合いのテンポが心地よく、全体の雰囲気も明るくポジティブです。月から来た破天荒なキャラと地に足のついた主人公という組み合わせは、昔ながらの物語の構図なのに新鮮に感じられます。 第一巻という位置づけなので、まだ物語の全容は見えていませんが、今のところ続きが気になる程度には世界観に引き込まれています。慎重派の私としては、続きを読む価値は十分にあると判断できます。
2026年08月04日
直木賞受賞作ということで期待値を高めて手に取りました。実際のところ、その期待を十分に満たしてくれた作品です。 エンジニアの視点から見ると、この作品の魅力は何といっても技術者の心理描写にあります。自分たちが開発した部品に込められた思いや、それを手放すことの葛藤が非常にリアルに描かれている。著者の取材の丁寧さが伝わってきます。町工場という舞台設定も秀逸で、大企業との対比が物語に緊張感を生み出しています。 ただし、分量は結構あるので、どこまで続くのかという不安がありながら読み進めました。でも、その過程で登場人物たちの人間関係や企業の葛藤がしっかりと構築されていくので、最後まで引き込まれます。特に主人公の決断シーンは、職人気質と現実的な判断のはざまで苦悩する姿が印象的でした。 エンターテインメント性の高さと、仕事への向き合い方についての深い思考が両立している。仕事をしている人間であれば、一度は読む価値のある作品だと思います。
2026年07月25日
ハッカーのマインドセットをビジネスに応用する観点から期待して読みました。Lispの深い知見や、テクノロジーとアート的感性の融合といった独特の視点は確かに興味深いです。特に「普通のやつらの上を行く」というコンセプトは、エンジニアとして刺激を受けました。 ただし、全体的には啓発的な内容に留まっている感じがします。具体的なビジネス展開の話や実装手法についても、もう少し深掘りがあると嬉しかったところ。また、執筆時期が古めなので、現代のスタートアップシーンとの乖離も感じました。 エンジニアなら読んで損のない一冊ですが、ベストセラーとしての期待値が高い分、その期待を大きく超える発見があるかというと、微妙なところです。既知の内容と新しい視点が混在しているといった印象で、キャリア中盤以降の実務的な参考になるかは個人差が出そうですね。
2026年07月17日
仕事をしていて感じるのは、経済ニュースを読んでいても表面的な理解に留まることが多いということだ。このテキストはそうした課題を正面から解決してくれる。 日経経済知力テストという枠組みを通じて、複雑な経済現象が体系的に整理されている。特に評価軸とジャンル分けのアプローチが秀逸で、日本経済や世界経済の全体像を効率良く把握できる。図表も豊富で、視覚的に理解しやすい点が良い。 エンジニアとしては、ビジネス判断をする場面で経済知識の穴があることに以前から気づいていた。このテキストを丁寧に読み進めることで、そうした知識の欠落を埋められたと実感している。各章の練習問題も実践的で、単なる知識習得に留まらず、その知識を応用する力が身につく設計になっている。 慎重に選ぶ方なので、事前に複数のレビューを確認してから購入したが、その判断は正しかった。自分のキャリアの次の段階を見据えている人、あるいは投資や事業判断に関わる立場の人には特に推奨できる一冊だ。
2026年07月09日
親の老後という現実的な課題に直面する可能性が出てきた年代として、このテーマは他人事ではない気がしていました。本書を読んで、正直かなり救われました。 著者が緩和ケア医という立場から、医学的な知見と人間的な温かさで綴っているところが特に良い。単なるハウツー本ではなく、関係のよくない親を看取ることの複雑な感情を認めてくれている。「こんなことを考えるのは悪い」という罪悪感に苛まれがちなテーマなのに、その感情が自然で健全だということを示してくれる著者の姿勢が心強い。 エンジニアとして論理的に物事を考える習性があるのですが、この本はそうした頭の部分だけでなく、心の整理にも役立ちます。実践的なアドバイスも盛り込まれており、いずれ訪れるかもしれない状況への心構えができました。 多くの人が避けて通りたいテーマだからこそ、向き合うためのこうした良質な本は貴重だと感じます。同じような悩みを持つ人には、ぜひ読んでほしい一冊です。
2026年07月01日
仕事の効率化やスキルアップについての本ばかり読んできたので、このような問いかけの本は新鮮だった。 著者は「将来の夢」や「やりたいこと」といった既存のテンプレートに無理やり自分を当てはめることの違和感を丁寧に説いている。エンジニアとして働く中で、自分も同じ違和感を感じてきたので、その思考が言語化されているのを読むのは気持ちがいい。 特に良かったのは、マンガや作品の登場人物を例に挙げながら、本当の夢中や没頭とは何かを探っている部分。実例があることで抽象的にならず、読みやすい。短編形式なので通勤時間に少しずつ読めるのも実用的だ。 ただ、具体的な行動指針までは踏み込んでいない印象。「一歩を踏み出す」というメッセージは良いが、現実的にどう進めるのかはやや曖昧なままだった。慎重派の自分としては、もう少し実践的なステップがあると、さらに説得力が増したと思う。 それでも、立ち止まって自分に問い直す時間をくれた良い一冊。人生のどこかで立ち返りたい本になりそうだ。
2026年07月01日
ベストセラーということで期待を持って手に取ったのですが、正直なところ、予想通りの面白さといった感じでしょうか。 江戸時代の芝居町を舞台にした仇討ちの物語。菊之助という若衆による仇討ちの顛末と、その後に現れた侍との関わりを描いた構成は確かに巧妙です。著者が仕掛けた「真相」へのアプローチも、よく計算されていると感じます。ページをめくる手が止まらなくなるような加速度は、確かにそこにあります。 ただ、読み終わった後の充足感がいまひとつ。エンジニアとして、物語の構造を追いながら読むクセがあるせいか、「ここへ導く」という意図がやや見えてしまったのかもしれません。また、登場人物たちの心情の描き込みが、もう一層掘り下げられていれば、という気もしました。 決して退屈な作品ではありませんし、江戸情緒の描写も丁寧です。ただ、話題作だからこそ期待値が高くなり、結果として「良い作品ではあるが、傑作とは言いがたい」という印象に落ち着いた、というのが正直な感想です。時間に余裕があれば読む価値はあると思いますが、積読を抱えている身としては、優先度は高くないかな、というところでしょう。
2026年06月28日
経営者として著名な稲盛和夫氏の著作だということで、当初は懐疑的な気持ちで手に取りました。ビジネス書特有の根拠なき楽観論や、成功者による一方的な啓蒙になるのではないかという懸念があったからです。しかし読み進めるにつれ、その心配は杞憂だったことに気づきました。 本書の最大の強みは、著者の経験に基づいた具体性です。京セラやKDDI創業、JAL再建といった大きな成果を収めた実績を背景に、なぜそうした判断に至ったのか、どのような心持ちで困難に向き合ったのかが丁寧に説明されています。エンジニアとして論理的思考が求められる職業に従事する私でも、その説得力に納得できました。 特に印象的だったのは、夢や目標を持つことの大切さと、それを実現するための地道な努力について述べた部分です。これは技術の追求と本質的に同じものだと感じました。150万部を超えるロングセラーになった理由がよく理解できます。20年以上前の著作とは思えない普遍性があり、人生の指針を求めている人には強くお勧めできる一冊です。
2026年06月24日
ベルリンの刑事弁護士を主人公とした連作短編という構成に、初めは大いに期待して手に取りました。編集部の推薦文も熱く、ミステリとしての完成度が高いと謳われていたからです。 実際に読み進めてみると、各事件の謎解きの仕掛けはきちんと作られており、読み応えがあります。法廷ものとしての説得力も感じられました。ただ、正直なところ、「完璧」という高い評価ほどの興奮には至りませんでした。 むしろ、短編ごとに設定やトーンがやや一貫性を欠く印象を受け、連作としての一体感がもう一段階欲しかった気がします。個々の事件解決のプロセスは丁寧なのですが、弁護士という主人公の人物描写の深さが足りず、なぜ彼がこれらの事件に執着するのかという核の部分がぼやけているような感覚も残りました。 ミステリ好きには十分価値のある一冊だと思いますが、期待値を上げすぎず読むことをお勧めします。堅実な作品です。
2026年06月17日
仕事の疲れを癒すために手に取った一冊だったが、予想外の深さに引き込まれてしまった。 「この世には不思議なことなど何もない」という京極堂の言葉から始まるこのシリーズ、実は理屈と感情のバランスが秀逸だ。エンジニアとしての思考癖が強い自分は、論理で世界を説明しようとする傾向がある。しかしこの作品は、一見不可解な事象を、徹底的な推理によって見事に説きほぐしていく過程が心地よい。 20ヶ月の身籠りや密室からの失踪という荒唐無稽な設定も、京極堂と関口、榎木津らのやり取りを通じて、納得できる解答へと導かれる。その過程で、古本屋という舞台設定も含めて、世界観がじわじわと立ち上がってくる。 文庫版ということで手軽に読める点も良い。ただし内容は決して軽くなく、思考の回転を要求される。むしろそこが醍醐味といえるだろう。シリーズ第1弾という信頼感もあり、今後の巻も確実に読み進めていくつもりだ。理屈好きで、でも人間の不合理さにも興味がある人なら、まず間違いなく満足できる一冊である。
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