雄一の本棚
日本を棄てた日本人

日本を棄てた日本人

石戸谷滋 草思社 1991年6月1日

感想

年を重ねると、人間にとって「場所」というものの意味が段々と見えてくるようになる。この本を読んで、そのことを改めて実感した。 高度経済成長期の日本を後にしてアメリカに渡った日本人たち。彼らは決して貧困から逃げたわけではなく、金儲けだけが目的でもない。では何が彼らを動かしたのか――著者がその問いを丹念に追っていく様子が素晴らしい。カリフォルニアという特殊な地で生きる「新一世」たちの軌跡を通じて、浮かび上がる当時の日本社会の息苦しさ、そして彼らが本当に求めていたものが何だったのかが、じわじわと読み手の心に沁みこんでくる。 自分たちの時代、サラリーマン化した社会で息苦しさを感じていた人間は少なくなかったはずだ。この本はそうした時代の空気を、海を渡った人たちの眼差しを通して鮮烈に映し出している。エッセイとしての質の高さはもちろん、読んでいて自分自身の人生についても考えさせられる、そんな一冊だった。

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