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耳袋秘帖 南町奉行と消えゆく町

耳袋秘帖 南町奉行と消えゆく町

風野 真知雄 文藝春秋 2026年2月4日

感想

江戸の謎解きものは気軽に読むのにちょうどいいと思っていたけど、この作品はそれ以上の面白さがある。消えゆく人々、赤い羽根という不気味なモチーフ、そして南町奉行・根岸肥前守の沈黙──こうした要素が絶妙に絡み合って、読み始めたら一気読みしてしまった。 江戸の町への描写が実に丁寧で、品川の高輪南町が生き生きと浮かび上がるようだ。商人たちの営みや町の空気感を感じながら読んでいると、そこに異異が忍び寄るという緊張感が心地よい。天狗の仕業かもしれないという噂が町に広がる様子も、昔の人間関係の中での情報伝播の生々しさが伝わってくる。 根岸肥前守のキャラクターも魅力的で、沈黙の理由が何なのか、謎解きに引き込まれるのと同時に、この人物の深さにも惹かれた。自営業で忙しい身だからこそ、こういう手軽に読める時間がありがたい。でも決して手軽さだけの作品ではなく、きちんとした構成と味わいがあるのが素晴らしい。江戸ミステリーの新しい可能性を感じさせてくれた一冊だ。

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