ゆーきの本棚
おまあ推理帖

おまあ推理帖

諸田 玲子 文藝春秋 2026年1月9日

感想

このところ新聞でもよく話題になっている『おまあ推理帖』を手に取りました。アガサ・クリスティーの名作をこの時代に江戸浅草で蘇らせるという企画に、思わず興味をそそられたのです。 読み始めてみると、おまあというおばあさんのキャラクターがとても良い。江戸の庭で野草を育て、人々のお悩みを聞く気ままな隠居暮らし。そのような田舎の暮らしぶりは、私たち高齢者にも身近に感じられます。何も知らないようでいながら、ふっと人の心の奥を見抜く。そういう知恵を持った老人像というのは、古くて新しい魅力があるものですね。 諸田玲子さんの筆致は相変わらず確かで、江戸情緒がみずみずしく描かれています。密通の怪文書から始まる事件の数々も、古風でありながらも妙に現代的な人間ドラマが奥底に流れていて、引き込まれます。退職後の身として、このようなお話の中で人生経験を重ねたおばあさんが活躍する場面は、なんだか我が身のことのように感じられました。談話室で語り合うような、そんな親しみやすさがこの作品の何よりの魅力だと思います。

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