一郎の本棚
感想

新聞広告で目に留まって、興味本位で手に取った作品です。「欲望に忠実な女性」という設定だけでは判断しづらく、各紙の絶賛コメントを確認してから購入を決めたのですが、その慎重さが報われた気がします。 梶井真奈子という容疑者を軸に、複数の人物の内面がどう変貌していくのかを描く構成が秀逸でした。一見すると通俗的な犯罪サスペンスに見えるかもしれませんが、実は現代社会における欲望や自由、そして人間関係のあり方に対する深いメッセージが込められています。 特に印象的だったのは、登場人物たちが梶井との関係の中で、自分たちが抑圧していた本心に気づいていく過程です。新社会人として社会人らしく振る舞うことを意識している自分にとって、「本当の欲望と社会的な顔」のズレについて考えさせられました。 確かに不安定さや違和感を感じる場面も多いのですが、それが物語の狙いなんだと納得できます。サスペンスとしての完成度と、文学的な深さのバランスが取れた傑作だと思います。

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