新しい文芸誌ということで、実績のある編集陣と豪華な執筆陣に惹かれて手に取りました。5万部の売上という触れ込みも、質の高さを期待させるに十分でした。 ただ、実際に読んでみるとやや期待値と現実にズレを感じてしまいました。「悪」という特集テーマは興味深いのですが、掲載作品全体として一貫性に欠けるというか、統一感がないんです。各著者が個々の作風で自由に表現しているのは理解できますが、特集として成立しているのか疑問が残ります。 収録されている短編はどれも及第点以上の出来栄えです。ただ、初号の勢いや話題性と比較すると、二号目ということで多少の期待値下げ補正をしても、やはり物足りなさがあります。新しい才能の発掘という点では機能していますが、既存の有名作家との作品のばらつきが大きく、読み応えが不均等に感じられました。 エッセイ部分も含めて、全体的には「無難な良さ」という印象に落ち着いてしまいました。次号に期待したいところです。
最近登録された他の本の感想
2026年08月25日
新社会人になってから、なかなか本を読む時間がとれなくなっていたのですが、「本好きの下剋上」シリーズは別です。仕事帰りに疲れていても、ついつい手に取ってしまいます。 ハンネローレの貴族院五年生3巻は、これまでのシリーズを踏襲しながらも、登場人物たちの関係性がより複雑に、そして深く描かれていることに驚きました。主人公マインの成長だけでなく、周囲のキャラクターたちも独立した意志を持って物語に関わっているのが魅力的です。 貴族社会という独特の設定の中で、政治的な駆け引きや人間関係の微妙な変化が緻密に表現されており、単なるファンタジー小説ではなく、人間ドラマとしても非常に完成度が高い。新シリーズに移ってからも質が落ちていないどころか、むしろ深掘りされているように感じます。 累計1300万部を超える人気も納得です。今から新シリーズを始めようか迷っている方がいれば、迷わず手に取ることをお勧めします。アニメ化も決定しているようですし、この機会に世界観にどっぷり浸かるのはいかがでしょうか。
2026年07月25日
期待値が高すぎたのかもしれません。「怖さの本質を抉りだす」というキャッチコピーに惹かれて手に取った『猿』ですが、読み終わってみると、その期待と現実のギャップに少し落胆しました。 限界集落という舞台設定や、同居人の異変といった設定は興味深いのですが、展開が予想の範囲内に収まってしまった感じがします。もっと予測不可能な恐怖や、深い心理描写を期待していたのですが、むしろ説明的になってしまっている部分が多いように感じました。 新社会人として仕事で疲れているときに読もうと思い、適度な緊張感のある小説を探していたのですが、この作品は中途半端な不気味さが続くだけで、物語として昇華しきれていない印象を受けました。もう少し登場人物の背景が掘り下げられていれば、また違う印象だったかもしれません。 丁寧に構成された作品ではあるので、心理サスペンスが好きな方には響くかもしれませんが、個人的にはもう一押し何かが足りないように感じました。
2026年07月23日
映画化作品ということで少し躊躇していたのですが、レビューでの評判が良かったので思い切って手に取りました。正解でした。 原作のファンとしては、キャラクターたちの成長を丁寧に描きながら、映画としての迫力もしっかり感じられる作品に仕上がっていると思います。特に終盤に向けての緊張感の高まり方が秀逸で、ページをめくる手が止まりませんでした。 新社会人の身として、E組の生徒たちが限られた時間の中で目標に向かって奮闘する姿勢がすごく心に響きました。笑いあり、感動ありの構成も心地よく、エンタメとしての完成度が高い。何より、最後にこのシリーズの物語を締めくくるにふさわしい結末が用意されている点が素晴らしいです。 映画を見ていない方でも楽しめますし、既に作品を知っている方にも新しい発見があると思います。誰かに勧めたくなる、そんな一冊です。
2026年07月15日
短篇集を手にする際は、レビューをかなり念入りに確認する方なのですが、この作品はそうした慎重さが報われる一冊でした。 ナポレオンへの妄執に取り憑かれた男たちを描く表題作から始まる13篇。一つ一つが驚くほど完成度が高く、たった数十ページの中でキャラクターの内面を鮮やかに浮かび上がらせています。特に印象的だったのは、作者の観察眼の鋭さ。人間の矛盾や歪み、ちょっとした違和感を日常の中から丁寧に掬い上げ、それが物語の中でどう転がっていくのか—その運びが実に巧妙です。 直木賞受賞作だけあって、文章のクオリティも申し分ありません。説明的にならず、暗示的に読み手を引き込む筆さばきは、読んでいて新社会人の自分にも勉強になるほど。収録される「来訪者」など、後味の良さと深さのバランスが絶妙で、読み終わってもしばらく考えさせられました。 新書判のコンパクトなサイズも魅力。通勤中や休憩時間にさくさく読み進められるのに、内容の濃さは全く損なわれていない。短篇の傑作集を探している方には、本当にお勧めできます。
2026年07月09日
最初は設定だけを見て、ちょっと難しそうだなと思っていたんですが、読み始めたら一気に引き込まれました。内ホーナー国と外ホーナー国という、一見すると奇想天外な世界観なのに、そこに描かれる権力の構造や民衆心理が妙にリアルで不気味です。 フィルというキャラクターが本当に秀逸で、彼の台頭を見守る(見せられる)感覚は、おとぎ話というより現代の政治風刺のような緊張感があります。短編集とはいえ、その短さが逆に効いていて、各話が鮮烈に心に残ります。 ただ正直なところ、翻訳がやや癖があるというか、句読点の打ち方や表現が独特で、最初は読みづらさを感じました。でも読み進めるうちにそれも含めてこの本の魅力だと気づきます。抱腹絶倒という帯の言葉通り、笑える場面も多いのに、同時に背筋が寒くなるようなシーンもある。その緊張感の行き来が素晴らしいです。 新社会人として、世の中の仕組みをあらためて考え直させてくれる一冊でした。
2026年07月08日
アンソロジー形式の百合小説というのは、これまであまり手に取ったことがなかったのですが、収録作家のラインナップに惹かれて思い切って購入しました。正解でした。 桜庭一樹さんの「来世は春の泥になりますように」から麻耶雄嵩さんの「大行司春香最初の事件」まで、8篇それぞれが全く異なるアプローチで「愛」というテーマに向き合っています。同じジャンルの作品でも、こうも表現の幅が広がるものかと感心しながら読み進めました。 強いて言えば、全体を通して一貫性を感じたいという慎重な性格から、作品ごとの質のばらつきが気になった部分も正直あります。でも、8篇中7篇は本当に素晴らしく、特に印象的な作品との出会いだけで、この本を手にした価値は十分にあります。 新社会人として、移動中の時間に少しずつ読む読み切り形式というのも、忙しい日常の中で無理なく続けられました。百合好きでなくても、純粋に文学として楽しめる一冊だと思います。
2026年06月30日
シリーズ3巻目ということで期待を込めて手に取ったんですが、正直なところやや失望してしまいました。 前作までの緊張感のある謎解きの面白さが、今作ではいくぶん薄れているように感じます。猫猫のキャラクターや世界観の魅力は相変わらず素晴らしいのですが、ストーリー展開が散漫になっていて、各エピソードが独立した印象を受けてしまうんです。特に後半は急ぎ足で進められているようで、もう少し丁寧に描写してほしかったなと思います。 また、新社会人の身としては、仕事で疲れているときに読むライトノベルは、もっとスッキリと納得できる結末を求めてしまいます。複雑に絡み合った人間関係や政治的な陰謀も興味深いのですが、もう少し読みやすさと満足感のバランスがあると嬉しいですね。 シリーズを追いかけている身としては続きが気になるところですが、次巻に期待しつつ、もう一度ペースを見直してくれることを願っています。
2026年06月26日
新社会人として仕事を始めたばかりの今だからこそ、この本が響きました。教育という社会的意義のある仕事に人生を捧げた家族の物語を読んでいると、職業選択の重みや責任感について改めて考えさせられます。 昭和から平成にかけて、学習塾業界という一見地味だけど確実に社会に影響を与える世界で、三世代にわたって奮闘する大島家の姿が丁寧に描かれています。時代の変化に翻弄されながらも、教育への信念を貫こうとする登場人物たちに、自分たちの世代が何を残すべきか問いかけられたような気がします。 特に印象的だったのは、各世代の人物たちが直面する葛藤がリアルに描かれていることです。完全な正義者ではなく、迷い悩みながら決断を重ねていく人間らしさが良かった。ボリュームのある作品ですが、そのスケール感の中で時間をかけて人物が成長していく過程をしっかり追える満足感があります。 社会人として人生を歩み始めた自分にとって、仕事の意味や人生設計について考える上で貴重な一冊になりました。
2026年06月22日
芥川賞候補作という触れ込みに惹かれて手に取った一冊。正直なところ、期待と現実のギャップを感じてしまいました。 表題作「わたくし率 イン 歯ー、または世界」は、歯という身体の一部を軸に哲学的なテーマを掘り下げるという、なかなか野心的な試み。著者の独創的な文体は確かに目新しく、リズミカルな表現には引き込まれる瞬間もあります。ただ、その斬新さが時に独りよがりに感じられてしまい、読み手を置いていってしまう印象が拭えません。 歯科助手への転職、恋人との関係、未来の子どもへの想い——複数のテーマが絡み合いながら展開していくのですが、各要素の繋がりが必ずしも明確ではなく、読み終わった後に「結局、著者は何を伝えたかったのか」と首を傾げてしまいました。 新社会人の身としては、もう少し物語として整理された作品の方が、腑に落ちやすかったかもしれません。実験的な文学に挑戦する価値はありますが、万人向けではない一冊だと感じます。
2026年06月18日
シリーズ3巻目にしてようやく主人公が指揮官として活躍する舞台が整ったんだなと感じました。これまでの積み重ねがあるからこそ、この巻での決断の重みが引き立つ。 前作までの「大叔父との対決」を経て、主人公が本当の試練を迎える。単なる戦闘の勝利ではなく、部隊の損耗を抑えるために知恵を絞り続けるという指揮官としてのリアルな悩みが丁寧に描かれているのが良かった。新社会人の自分にとって、責任を背負うことの葛藤がすごく響きました。 「魔の森」という未知の状況での予測不能な事態も、単なるエンタメの盛り上げではなく、物語として必然性を感じさせる構成になっていて、ストーリーテリングの質の高さが伝わります。 ただ、シリーズを追う必要があるので、新規読者には最初の巻から読むことを強くお勧めします。この巻だけでも物語は完結していますが、登場人物たちの成長過程を味わうなら、やはり積み重ねが大切。慎重に選ぶ私としては、そこだけ確認してから手に取ってほしいと思います。
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