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感想

最近、話題になっていたこの本を手に取ってみました。幼女誘拐事件という重い題材ながら、単なるミステリーの枠に留まらない深さがあって、老いぼれた身にもしみじみと響きました。 捜査一課長が窮地に追い詰められていく過程、警察内部の葛藤、そしてマスコミの追い打ち。こうした現代社会の歪みが丁寧に描かれています。特に印象的だったのは、新興宗教や家族愛といった要素がこれほどまでに人間の内奥の痛みを浮き彫りにできるのか、という驚きです。 八十年も生きていると、人間の悲しみというものが何であるか、ある程度は分かったつもりでした。しかし著者が描く「慟哭」は、単純な悲しみではなく、耐えがたい喪失感と人間関係の複雑さが絡み合った、もっと根深いものなのです。文庫版で読みやすいのも有難い。デビュー作とは思えないほどの完成度で、こういう力作を世に送り出す新しい才能が出てくるというのは、いくつになっても嬉しいものですな。

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