莉子の本棚
虹の谷の五月(下)

虹の谷の五月(下)

船戸与一 集英社 2003年5月25日

感想

このたび、下巻をようやく読み終わりました。実は上巻を読んだときから、この続きが気になって仕方がありませんでしたので、やはり期待に違わぬ感動でした。 セブ島を舞台にした少年トシオの成長の物語ですが、第三世界の抱える複雑さと、そこで生きる人々の葛藤が、これほどまで深く描かれているとは思いませんでした。決して分かりやすい話ではありませんが、だからこそ、読み進めるたびに考えさせられることが多くあります。戦闘や政治的な背景も素人の私には難しい部分がありましたが、少年の視点を通じて世界を見つめ直す経験ができました。 作者が、あの時代、あの地域の人間関係や感情をここまで丁寧に紡いでくれたことに、心から感謝しています。人生の後半戦に入った今だからこそ、別れや喪失、そして人間の強さについて、より深く理解できたのかもしれません。直木賞受賞作という評判も納得のいく傑作です。何度も涙を流しながら読みました。