テレビで話題になっているのを見かけて、少し警戒しながら手に取った一冊です。殺し屋という物騒なテーマで、最初は躊躇いもありましたが、江戸川乱歩賞受賞作と知り、また多くの著名な作家さんが推薦されていたので、思い切って読んでみました。 正直なところ、予想をいい意味で裏切られました。タイトルの生々しさに反して、この本は人間関係や仕事の本質、人生の選択について深く考えさせる作品なのです。主人公が「営業術」という日常的なテーマを通じて、自分の在り方や周囲との関係性にどう向き合うのか、その過程がとても丁寧に描かれています。 ページをめくる手が止まりませんでした。ボランティア活動をしていると、人間関係の難しさや複雑さをよく感じますが、この物語はそうした現実の一面を映し出しているような気がします。読み進めるごとに、主人公が何かに気づき、変わっていく様が自然で、説得力がありました。 これまでのミステリーや冒険小説とは違う、心理的な深さがあります。ご年配の方にも、若い世代にも読んでいただきたい、バランスの取れた素敵な作品だと感じます。
最近登録された他の本の感想
2026年08月03日
英語学習の補助資料として、娘に勧められて手に取りました。辞書としての基本的な機能はしっかり果たしており、75,000以上の見出し語と150点の新しい挿絵が掲載されているのは確かに充実しています。 ただ、正直なところ期待していた以上の特別さは感じませんでした。表記法や使用例の説明は十分ですが、他の同等クラスの辞書と比べて際立った工夫があるわけではないという印象です。補足ページの執筆法や計量法に関する情報は有用ですし、地理的・伝記的な項目が統合されているのは助かります。 ボランティアで英語が必要になることもあるので、机の上に置いておくには良い一冊ですが、この値段を出して強く推し進める必由は感じません。確実性を重視する私としては、もっと詳しい解説や具体例が豊富な版を選ぶのもよかったかなという気がしています。基本的な辞書としては悪くありませんが、特に目立つ利点もなく、可もなく不可もなくといったところです。
2026年07月27日
第29回太宰治賞受賞作とのことで、どんな作品かと慎重に情報を集めてから手に取った一冊です。異なる国から来た二人の女性の出会いと、そこから広がる人間関係が丁寧に描かれていて、本当に良かった。 サリマという女性の人生の複雑さ、そして日本人女性「ハリネズミ」の静かな葛藤。どちらか一方的に同情するのではなく、それぞれの立場から物を見つめようとする作品の姿勢が素敵だと感じました。逃げられた夫、育てねばならない息子たち、言葉の壁。そうした困難の中で、彼女たちがどのように生きていくのかを見守る気持ちで読み進めました。 オーストラリアの田舎町という舞台も、どこか親近感がわきます。異国で、言葉も文化も違う場所で、自分たちの足がかりを探しながら前に進もうとする。その様子が静かに、けれど力強く描かれているんです。 金銭的に余裕がない時代だからこそ、人間同士のつながりの大切さがより一層心に響きます。ボランティア活動を続ける中で感じることと通じる部分がありました。迷わずお勧めできる一冊です。
2026年07月18日
このところ、人間関係のいろいろなことで心が揺れることが多くなっていました。ボランティアの活動を通じていろんな方とお付き合いさせていただいているものですから、時には複雑な感情を抱えることもあるんです。そんなときに、友人がこの本を勧めてくれました。 初めは「ブッダの教え」と聞いて、少し難しいのではないかと躊躇していたのですが、読み始めてびっくり。むずかしい宗教的な話ではなく、本当に日常生活で使える、実に合理的な考え方が綴られていました。著者の説き方が率直で誠実なので、素直に受け入れることができました。 とくに「反応しない」というシンプルな教えが心に響きました。悩みの多くは、私たちが出来事に過剰に反応してしまうことから生まれるのだということ。これを読んでから、イライラしたときもいったん立ち止まり、本当に反応する必要があるのかを問い直してみようと思うようになったのです。 72年も生きていると、なかなか新しい考え方を取り入れるのは難しいと思っていたのですが、この本のおかげで心が少し軽くなった気がします。年配の方からお若い方まで、多くの人に読んでいただきたい一冊です。
2026年07月04日
第一巻に続いてこの物語を読み進めました。筆耕師数馬が依頼人の想いに向き合う姿勢は、やはり心が温かくなります。 今回は恋文という難しいテーマを扱っていますね。ご隠居さんの心配事から始まる物語は、一見単純に見えても、その奥には人の葛藤や後悔といった複雑な感情が層をなしています。健吾の姉を思う気持ちが、思わぬ形で傷つけてしまう経過は、私たちの人生でもよくあることだと感じました。 こうした人間関係のもつれを、数馬がどのように整理していくのかが見どころです。言葉を扱う職人だからこそできる、細やかで優しい解決方法に、思わず目頭が熱くなりました。年を重ねた身からすると、人との関係を修復することの大切さが、一層身にしみます。 文庫本という手頃な形式も、何度も手に取りやすくてありがたいです。穏やかな筆致で丁寧に紡がれた人情話。人生経験を重ねた方々とのボランティア活動を通じて感じることとも通じる部分が多く、この作品をお勧めしたいと考えています。
2026年07月02日
道尾秀介さんの作品は以前から気になっていたのですが、この「ブラックローズ」は脱出ゲーム型の仕掛けということで、正直なところ最初は戸惑いました。ただ、他の方のレビューを参考にしながら手に取ってみると、これが予想外に面白い経験でしたね。 ホテルのパーティで起きた殺人事件という舞台設定は、古典的ながらも親しみやすく、登場人物たちの証言や資料を辿りながら謎を解いていく過程が、まるで自分も捜査に参加しているような臨場感をもたらします。年を重ねた身としては、こうした参加型の読書体験は新鮮でした。 ただし、提示される情報の量が相当あるので、時に読み返す必要も生じます。それがいくらか手間に感じる瞬間もありましたが、その代わりに真実に辿り着いた時の達成感は格別です。何度も考え直させられる構成は、著者の仕掛けの巧みさを感じさせます。 慎重派の私でも楽しめた一冊。知的興奮を求める方には、特におすすめできます。
2026年06月25日
文庫本棚でこの本を見つけたときは、タイトルの不思議さに思わず手に取ってしまいました。夜空にチョコレートグラミー?何のことやら…と首をかしげながらも、選考委員に絶賛されたというR-18文学賞大賞受賞作との言葉に惹かれて購入を決めました。 読み始めてすぐに、この著者の筆致の柔らかさに心を掴まれました。思いがけない再会から始まる恋の話、そして叶わぬ想い…どれもが切実で、それでいて優しく描かれています。舞台となる小さな街での少年少女の成長も、瑞々しさに満ちていて、当たり前のことをただ当たり前に懸命に生きることの素晴らしさが伝わってくるようです。 短編集ということもあり、一つ一つの話が適度な深さで、無理なく読み進められました。人生の様々な局面で、どんな場所でも前へ進もうとする人々の姿。その強さとしなやかさが、静かに心に沁み込んできます。若い時に読む喜びもありましょうが、人生経験を重ねた今だからこそ、何度も頷きながら読めた気がします。丁寧に、確かな言葉で紡がれた素敵な一冊です。
2026年06月20日
最近のSNSやYouTubeといった現代的な題材を扱ったミステリは珍しいと思い、恐る恐る手に取ってみました。72歳の私には新しい世界のお話ですが、この本は上手く現代と人間の本質を絡ませていて、とても興味深く読むことができました。 何より驚いたのは、各篇が綿密に計算された構成になっており、一見すると日常の小さな違和感が、後になって大きな意味を持ってくるところです。特に「拡散希望」という題のお話は、島という限定的な空間で起きる出来事を通じて、現代社会が抱える問題を深く問い掛けていました。 著者の「どんでん返し」の手腕は見事で、予想を裏切られることが何度もあります。ただ強引に読者をだますのではなく、きちんと伏線が張られているので、読んだ後に「ああ、そういうことだったのか」と納得できるところが良いですね。 文庫本でお手頃な価格なのも有難いこと。今の時代を描いた作品に少し不安もありましたが、むしろそれが新鮮で、深い思考を促されました。同年代の方にも、新しいタイプのミステリに興味のある方にもお勧めできる一冊です。
2026年06月15日
孫たちから「おばあちゃん、プリンのキャラ知ってる?」と聞かれたことがきっかけで、このアートブックを手に取りました。正直なところ、若い世代向けのキャラクターだろうと思っていたのですが、開いてみると素敵な驚きに満ちていました。 1996年の手描き原画から現在までの三十年の歩みが丁寧に収められていて、それぞれの時代の空気感が感じられるんです。懐かしいグッズの写真を眺めていると、ポムポムプリンというキャラクターがどれほど多くの人に愛され続けてきたかが伝わってきます。新作の漫画も楽しく、ほっこりとした気持ちになりました。 装丁も上品で、本棚に置いておいても素敵です。何より、異なる世代の家族で同じものを楽しめるという点が良いですね。細かいディテールまで丁寧に作られているので、パラパラとめくるだけでも時間を忘れてしまいます。孫たちとも一緒に眺めて、話が弾みました。大切に保管したい一冊です。
2026年06月14日
映画化もされたということで、興味を持って手に取った一冊です。正直なところ、最近のミステリ小説は複雑すぎて途中で投げ出してしまうことが多かったのですが、この作品は違いました。 舞台となるペンション内での密室の中で、次々と起こる事件。登場する三人の「名探偵」たちがそれぞれ独自の推理を展開していく様は、まさに推理小説の醍醐味です。若い著者とは思えないほど丁寧に構成されており、伏線も見事に回収されていきます。 何より素晴らしいのは、読み手を欺くトリックの巧妙さです。私たち読者も登場人物と同じ情報しか与えられていないのに、最後には「なるほど、そうだったのか」と思わず声を上げてしまいました。年を重ねるにつれ、新しい作品の良さを判断することが難しくなっていたのですが、この本は間違いなく傑作です。久しぶりに、ページをめくる手が止まりませんでした。ボランティアの合間に読むのに、ちょうど良い刺激をもらった気がします。
2026年06月13日
孫に勧められて読んでみました。最初は推理小説は難しいかと思いましたが、この作品はそんな心配を吹き飛ばしてくれました。 何といっても、この物語の面白さは「なぜ人は人を殺すのか」という根本的な問いかけにあります。逮捕された犯人が動機を語らないという設定が、読み手の想像力をかき立てるのです。私も読みながら、何度も「なぜだろう」と考えずにはいられませんでした。 東野さんの筆力には本当に感心します。丁寧な描写と緻密なストーリー構成で、知らず知らずのうちに物語の世界に引き込まれていきます。登場人物たちの背景や心理描写も細やかで、単なる謎解きではなく、人間関係の複雑さも感じることができました。 少し長めですが、ページをめくる手が止まりませんでした。ボランティア仲間にも貸してあげたいと思います。人生経験を重ねた大人だからこそ、この物語の深さを味わえるのかもしれませんね。慎重に本を選ぶ方にも、自信を持ってお勧めできる一冊です。
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