莉子の本棚
さようなら、オレンジ

さようなら、オレンジ

岩城けい 筑摩書房 2013年8月1日

感想

第29回太宰治賞受賞作とのことで、どんな作品かと慎重に情報を集めてから手に取った一冊です。異なる国から来た二人の女性の出会いと、そこから広がる人間関係が丁寧に描かれていて、本当に良かった。 サリマという女性の人生の複雑さ、そして日本人女性「ハリネズミ」の静かな葛藤。どちらか一方的に同情するのではなく、それぞれの立場から物を見つめようとする作品の姿勢が素敵だと感じました。逃げられた夫、育てねばならない息子たち、言葉の壁。そうした困難の中で、彼女たちがどのように生きていくのかを見守る気持ちで読み進めました。 オーストラリアの田舎町という舞台も、どこか親近感がわきます。異国で、言葉も文化も違う場所で、自分たちの足がかりを探しながら前に進もうとする。その様子が静かに、けれど力強く描かれているんです。 金銭的に余裕がない時代だからこそ、人間同士のつながりの大切さがより一層心に響きます。ボランティア活動を続ける中で感じることと通じる部分がありました。迷わずお勧めできる一冊です。

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