夜空に泳ぐチョコレートグラミー
新潮社 | 2021/03/27
みんなの感想
文庫本棚でこの本を見つけたときは、タイトルの不思議さに思わず手に取ってしまいました。夜空にチョコレートグラミー?何のことやら…と首をかしげながらも、選考委員に絶賛されたというR-18文学賞大賞受賞作との言葉に惹かれて購入を決めました。 読み始めてすぐに、この著者の筆致の柔らかさに心を掴まれました。思いがけない再会から始まる恋の話、そして叶わぬ想い…どれもが切実で、それでいて優しく描かれています。舞台となる小さな街での少年少女の成長も、瑞々しさに満ちていて、当たり前のことをただ当たり前に懸命に生きることの素晴らしさが伝わってくるようです。 短編集ということもあり、一つ一つの話が適度な深さで、無理なく読み進められました。人生の様々な局面で、どんな場所でも前へ進もうとする人々の姿。その強さとしなやかさが、静かに心に沁み込んできます。若い時に読む喜びもありましょうが、人生経験を重ねた今だからこそ、何度も頷きながら読めた気がします。丁寧に、確かな言葉で紡がれた素敵な一冊です。
何度も手に取り直してしまった。それくらいこの短編集には、読み終わった後も心に残るものがある。 デビュー作とは思えない完成度の高さに驚いた。特に「カメルーンの青い魚」は、仕掛けの巧妙さもさることながら、思いがけないタイミングでよみがえる恋の切実さが、じんわりと胸に沁みる。表題作の「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」では、限られた環境の中で懸命に生きる少年少女の姿が、瑞々しく丁寧に描かれていて、読んでいて応援したくなる気持ちが止められなかった。 フリーランスという立場で、時に不安定な日々を過ごしている自分にとって、「どんな場所でも生きると決めた人々の強さ」というテーマは特に響いた。理不尽な状況の中でも、したたかに、あるいはしなやかに前に進もうとする登場人物たちに、自分も少し励まされた気がする。 慎重に本を選ぶ派だからこそ言えるが、この作品は手にとって損のない一冊だ。短編集だから読み進めやすいのも魅力。心に余白を持たせたいときに、そっと手に取ってもいい。
近頃、話題の本をチェックしていて目に止まった一冊です。R-18文学賞の大賞受賞作と聞きましたので、どんな作風なのか興味を持ちました。 読んでみると、若い世代の著者とは思えないほど、人間の心情を深く掘り下げた短編集でした。特に表題作の「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」は、限られた環境の中で必死に生きる少年少女たちの様子が、みずみずしく描かれており、それでいて哀愁も感じられます。懐かしい思い出も甦ってくるようでした。 5編の連作短編という構成も工夫されていて、人生のさまざまな局面における「生きることの強さ」というテーマが、しなやかに描き出されていると感じます。80を過ぎた身からすると、若い世代がこういった深い人間関係を考える作品を書くことに、むしろ感銘を受けました。 文庫版も読みやすく、内容の充実度を考えると、大変に良い買い物だったと思います。