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夜空に泳ぐチョコレートグラミー

夜空に泳ぐチョコレートグラミー

町田 そのこ 新潮社 2021年3月27日

感想

何度も手に取り直してしまった。それくらいこの短編集には、読み終わった後も心に残るものがある。 デビュー作とは思えない完成度の高さに驚いた。特に「カメルーンの青い魚」は、仕掛けの巧妙さもさることながら、思いがけないタイミングでよみがえる恋の切実さが、じんわりと胸に沁みる。表題作の「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」では、限られた環境の中で懸命に生きる少年少女の姿が、瑞々しく丁寧に描かれていて、読んでいて応援したくなる気持ちが止められなかった。 フリーランスという立場で、時に不安定な日々を過ごしている自分にとって、「どんな場所でも生きると決めた人々の強さ」というテーマは特に響いた。理不尽な状況の中でも、したたかに、あるいはしなやかに前に進もうとする登場人物たちに、自分も少し励まされた気がする。 慎重に本を選ぶ派だからこそ言えるが、この作品は手にとって損のない一冊だ。短編集だから読み進めやすいのも魅力。心に余白を持たせたいときに、そっと手に取ってもいい。