本屋大賞ノミネート作ということで、いくつか口コミを読んでから購入を決めました。正解でした。 バレエという非日常的な世界を舞台にしながら、天才とは何か、表現とは何かという根源的な問いに向き合った作品です。主人公・萬春の人生を八歳から追っていく構成が素晴らしく、各章で異なる視点から彼の姿が立体的に浮かび上がっていく快感があります。 フリーランスの自分としても、自分の仕事の価値を問い直す主人公の葛藤が響きました。「俺は世界を戦慄せしめているか?」というシンプルながら切実な問いが、読み進むほどに重くなっていく。創作に携わる人間なら、誰もが感じたことのある迷いや不安がそこにはあります。 描写が圧倒的です。バレエの動きを言葉で表現する難しさがあるはずなのに、著者は見事にそれを越えている。十年の執筆期間が納得できるほどの完成度です。 同じ著者の『蜜蜂と遠雷』も読んでいますが、この作品は更に洗練されているような気がします。表現者を描く小説として、これは傑作です。