感想
ずっと買うかどうか迷っていた一冊でしたが、複数のレビューで「読む前の自分には戻れない」という表現を見かけて、思い切って手に取ってみました。その表現は決して誇大ではありませんでした。 三人の登場人物の人生が交差する中で、現代社会が掲げる「多様性の尊重」というテーマが、次々と問い直されていきます。著者が鋭く指摘するのは、私たちが想像できる範囲の多様性だけを礼賛し、それ以外は無視しようとする傲慢さ。フリーランスとして生きている身としても、世間の「正解」に収まらない選択をすることの複雑さが身に染みます。 息子の不登校、初恋、秘密を抱える日常。個性的なキャラクターたちが背負う事情は決して単純ではなく、読み進めるにつれて判断が揺らぎます。その揺らぎこそが、この作品の強さなのだと感じました。長編ですが引き込まれるペースで、一気読みしてしまいました。読後、人間関係や多様性について考え直す機会をくれた、良い一冊です。